01-07;ぜんそく、呼吸器
所見
- 咳がひどいのにラ音が少ない;1)マイコプラズマ肺炎。2)百日咳。3)ニューモシスチス肺炎
- 寒冷凝集素価の上昇疾患;1)マイコプラズマ肺炎、びまん性汎細気管支炎。2)伝染性単核症などウイルス疾患。3)寒冷凝集素症(溶血性貧血を呈する)。4)単クローン性γグロブリン上昇
乳幼児突然死症候群(SIDS)
- 危険因子;うつぶせ寝、人工栄養、父母の習慣性喫煙、厚着の習慣
マイコプラズマ肺炎
- 潜伏期は7日〜21日。咽頭からは6週間検出されることも。
- 咳、発熱、発疹が顕著であれば1週間程度休学することが必要
- 診断はマイコプラズマ抗体(PA)(主にIgM抗体を検出)で320倍以上あれば診断。160倍未満であれば2週間後のペア血清にて4倍以上の上昇あれば確定。
- 迅速診断法は結果にばらつきがあり、6ヵ月また1年たっても抗体陽性のこともある。
- マクロライド系、ニューキノロン系抗生物質を投与1週間(より長期を勧める専門家もいる)。
急性細気管支炎
- RSウイルス(50%)、次いでパラインフルエンザウイルス(重症の下気道感染、肺炎を起こすこともある)
- RSウイルス感染とその後遺症として発症するreactive airway disease(RAD)が注目;2000年RSウイルス感染後に高率に気管支喘息が発症するとスウェーデンから発表。
- 気管支拡張薬は有効ではない。
- 治療は1)酸素吸入2)ネブライザーによる加湿3)輸液
- 治癒するまで7〜10日。喘鳴の消失にはさらにかかることがある。
喘息
- 気管支の一部が炎症を伴って狭くなる状態。ポイントは息苦しさ。
- 定義;発作性に笛声喘鳴を伴う呼吸困難を繰り返す疾病であり、発生した呼吸困難は自然ないし治療により軽快、治癒するがごく稀には致死的である。その病理像は、気道の粘膜、筋層にわたる可逆性の狭窄性病変と、持続性炎症およびリモデリングと称する初期変化からなるものと考えられている。臨床的には、類似症状を示す肺・心臓、血管系の疾患を除外する必要がある(日本小児アレルギー学会;小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005)
- アトピー型;発作を誘発する抗原に対する特異的IgE抗体が証明される型。90%以上が5歳までの幼児期に発症し、多くに遺伝素因あり。最近有病率の上昇と早期発症の傾向がある。男女比は幼児から学童期はやや男児に多く、思春期には1:1となる。約70%は成人になるまでに寛解。
- アトピー型は吸入アレルゲンによるI型アレルギーが関与。小児喘息の90%以上を占める。
- 非アトピー型;特異的なIgE抗体は証明されず、成人に多い。(肥満、喫煙、気道感染;成人ではこれらアトピーでない原因型は4割ほど。冬に増悪しやすい)
- 環境整備をはじめ生活指導上気を配らねばならない点が多いうえ、発作という予測しにくい急性増悪は時に致死的であるため、治療・管理が難しい。
- 小児喘息の有症率は都市部に多く、非都市部に少ないという地域差があるものの、30年以上前には1%程度であったが、現在は6%程度にまで増加している。
- 2006年頃の全数調査;全国に公立小中高に通う子供たちのうち、5.7%が喘息、5.5%がアトピー性皮膚炎、9.2%が花粉症を含むアレルギー性鼻炎、3.5%がアレルギー性結膜炎、2.6%が食物アレルギー、0.14%がアナフィラキシーにかかっていると報告。
要因
- ダニに対して反応を起こす子は喘息児の90%といわれる。
- 食物;特に卵と牛乳。反応は即時型と遅延型(1〜2日後)がある。
- 他にカビ、ペット、排気ガス、タバコの煙、花粉、運動後(特にマット運動)、風邪、気象(急な気圧変化)、疲労、心理的変化
- 妊娠中および出生後の母親の喫煙は良くない。母親の喘息は家族歴としては重要。
- 大気汚染は小児喘息の発症と難治性には影響は少ない。
- RSウイルスやライノウイルスは喘息の発症や悪化に関与する。
病態生理
アトピー型
- 即時型(1時間以内);肥満細胞が関与。遅延型(数時間経過後);好酸球が関与
気道壁の器質的変化
- 発作が繰り返されると、気管支平滑筋の肥厚、気道上皮過形成(上皮細胞剥離、杯細胞化生、気管支腺の肥大、基底膜肥厚)が起こる。器質化した粘膜は、ウイルス感染や汚れた空気などの環境刺激に対して正常人以上に過敏に反応するようになり、慢性化する。
感染症
気道過敏性
発作の誘因
アレルゲン
- 多くは吸入性アレルゲンであるが、時に卵やそばによって起こることもあるが、個々違うので無意味な制限は控えるべき。
- 吸入アレルゲンで最も重要なものはダニ。次いで重要なものは猫などの毛のある動物(猫を飼っていると70%以上が感作される)
運動誘発性喘息(EIA;exercise-induced asthma);下記にも記載あり
- 熱と水分の喪失が重要。明確な機序は不明
- 走り回る運動や登山で誘発されやすい。一方水泳、スキー、スケート、歩行では起こしにくい。
その他
- 風邪
- 台風シーズンや梅雨時に発作を起こしやすいことも知られている。
- 花火、タバコのけむりでむせて咳込んで発作を起こすこともある。
症状
- 呼気性喘鳴;高調性の笛声音。咳嗽;湿性で痰を伴う。呼気性呼吸困難(残気量が増える)。発作;季節の変わり目、特に秋に好発する、明け方に多い。
診断
- 視診、聴診(気道狭窄音、特に甲状軟骨の下)
- アトピー型も非アトピー型も末梢血の好酸球は増加。アトピー型では血清総IgE値は原則として高値。
対応
- 衣服をゆるめる、空気の入れ替え(温度差をつけず)、水分をとる(夏は冷たい物、冬は温かい物)、頸部を冷やす(中枢を通り気管支にいく神経をブロック?)、腹式呼吸、気分転換
非発作時
- 室内の換気を十分行う。ぬいぐるみや絨たんを減らす。
- 寝具への掃除機かけは週1回程度は行う。
- 規則正しい生活。家族の喫煙者は禁煙。
- 水泳など適度な運動。(水泳は吸気の湿度が高い)
生命の危機が懸念される場合
- 聴診で呼吸音が聴取しえない(silent chest)、
- チアノーゼ、
- 意識障害(不穏、昏迷)、
- 起坐呼吸で発汗著明、会話不能、呼吸数30/分以上、徐脈、
- PaCO2が45mmHg以上
- 気胸、皮下気腫、縦隔気腫、無気肺の合併がある時
治療
- 中枢性鎮咳剤は使わない。痰が排泄されないとかえって気道が細くなる。
副腎皮質ステロイド
- 上皮細胞剥離と過敏性亢進という炎症性気道障害に対する抗炎症作用を期待。
ポイント
- 過度な制限をする必要はなく、患児ひとりひとりに対して適切な個別指導を行うことが大切。(調子が悪い時に無理やり運動させる。逆に調子が良い時に体育を見学させられる等がないように)
学校行事
- 修学旅行で夜布団の上で暴れたり、枕投げでホコリを吸いこんで発作を起こすことがある。
- 花火やキャンプファイアーでは風向きを考えて煙から遠ざかるように指導。
- 運動会やマラソン大会では患児の体調、発作の特徴を把握する。
- プール;プールの水が冷たい時や寒い日の屋外プールでは発作が起きることもある。プール後よく乾かしてから外気に触れるようにして風邪をひかないように。
その他
- 寒い日に登校する時は、急に冷たい空気を吸わないようにマスクをする。少し慣らすなどが勧められる。
- そうじではホコリが舞い上がらないような場所を担当
- 動物の飼育当番で発作が起きた場合には、以後当番からはずす。
- 食物アレルギーがある場合には配慮。
予後
- 小児期に気管支喘息の既往があった成人の約50%が無症状であるが、成人再発の大きな危険因子である。
- RSやそのほかのウイルス感染による喘息は就学年齢時には症状が消失していることが多いが、アトピー型の場合には思春期まで喘息を持ち越すことがある。
- 10~20%が成人の気管支喘息に移行。10〜16歳ぐらいにアウトグロー(寛解)する。(身体的側面では気道の形態的、機能的成長、内分泌の変化、免疫学的変化が挙げられる)
- 1〜2%の死亡例がある。特に小学校高学年〜中学生にかけては喘息死を起こすこともある。
- アトピー性皮膚炎合併例、若年時発症例、抗原が多岐にわたる症例の寛解は低率である。
- 数百人単位のコホート研究によると、重症喘息では40歳を過ぎても半分近くで喘息発作が持続している。最も軽症のグループでは70%近くが発作が起きなくなる。成人に持ち越す危険因子としては、重症の喘息、早期発症、女児、ダニやダストによる感作、気道過敏性、喫煙、肺機能の持続的低下が抽出されている。
運動誘発喘息
- 運動に伴う気道粘膜からの水分や熱の喪失がきっかけと考えられている。
- 温度、湿度の低い環境の方が起こりやすい。(冬の持久走が問題となる)
- 数分以内(特に2分以内)の運動では起こりにくい。
- 予防;運動10〜30分前にβ2刺激薬、DSCG(インタール)の吸入が一般的。(吸入が難しい年齢では経口β2刺激薬は運動の30〜60分前に。遅延型の喘息を抑えるのはDSCG、ステロイドなど
- 起こる起こらないは喘息そのもののコントロールの指標の一つ
- ウォーミングアップやインターバルトレーニング、マスク着用は予防の方法
- 運動中に起きた発作が軽い場合には運動を中止して10〜15分間息を整えているうちに回復することが多い。運動後の発作が回復した後、6時間ぐらいたってから再び呼吸困難を起こすこと(EIAの遅延反応)がある。
- 一旦落ち着いてから走り出すと、次の発作は起こりにくい(不応期)
- 気道過敏性が亢進している喘息児ほど起こりやすく、小中学生の喘息児の半数に認められる。
アスピリン喘息
- 解熱鎮痛薬で過敏反応(アスピリンに限らない)
- コハク酸エステル型ステロイド(ソルコーテフ、水溶性プレドニン、ソルメドロール)で急速悪化することがある。
予防
- 冷水浴による鍛錬;自律神経の調整。風呂からあがってぬるま湯をかぶる。
- 乾布摩擦;呼吸数の減少と一回換気量の増加を目指す。しかし皮膚のバリア機能を傷害するので、乾燥肌の傾向のある子には勧められない。
- そうじ;掃除機による。ほうきやはたきではホコリやダニを舞い上がらせるだけ
食物依存性運動誘発性アナフィラキシー
- 特定の食物(小麦、エビ、カニなど)を摂取した後の運動で、喘息発作だけでなく、じんましん、喉頭浮腫、血圧低下(ショック)などを起こす全身反応