01-08;食物・アレルギー
育児情報
エネルギー
- 1歳のエネルギー必要量は100kcal/kg(学童で80〜70kcal/kg)。水分必要量はエネルギー所要量の1.2倍。
蛋白
- 乳児期後期の体重を8kgと仮定すると、蛋白所要量は3g/kg(大人は1g/kg)で1日24gの蛋白が必要となる。もしこれを母乳(蛋白含有量1.2g/dl)のみで補うこととすると1日2Lの母乳を飲まなければならず事実上不可能である。(卵、魚肉、鶏肉で補充)
- 必須アミノ酸は9種;イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン、ヒスチジン
脂質
- コレステロールは必要不可欠;細胞の構成成分である上に、食事に含まれる脂肪の消化吸収を助ける胆汁酸や、性ホルモン、副腎皮質ほるもん、ビタミンDなどはコレステロールが材料。
カルシウム
- 牛乳、大豆に多い。
- 乳製品以外のカルシウム吸収率は良くない。
鉄
- 卵黄、緑色野菜(ほうれん草)に多い。
- 10ヶ月以降は鉄が不足しやすいため、赤身の魚や肉、レバーなどで鉄分を補う。
ニコチン酸
ビタミンD
- 以前はくる病が多く、外気浴、日光浴を勧めていたが、今は母親の栄養環境が良くなったこと、ミルクにもビタミンDが入っているので勧めていない。
ビタミンK
- 出生当日、産科退院時又は生後1週のいずれか早い時期(日齢5)、1カ月健診時にそれぞれ2mg投与する。
- 新生児は腸内細菌叢が未成熟であるため、母体由来のビタミンKが消費されてしまう日齢5頃にビタミンK欠乏による出血傾向(この時期は臍部や採血部が多い)をきたすことがある。また母乳は人工乳よりKの含有が少ないため、生後1カ月でビタミンKを投与することにより頭蓋内出血の発生を予防できる。
離乳食
- 離乳とは、母乳ミルクなどの液体食から成人の固形食へ移行させる半固形食を食べる期間。およそ生後5カ月から始めて15ヶ月まで行う。
- 現在は離乳食の前段階の離乳準備食と呼ばれた果汁、麦茶、重湯などを与える必要はなく、5ヶ月になったら半固形食の裏ごし野菜(煮たり電子レンジで加熱調理した後、こし器などを使ってつぶした野菜)。
- 小柄でも頸がすわり、指しゃぶりをして涎も増えていたら離乳食の開始時期である。
- バナナ、カボチャ、ニンジンなどは乳児が喜びやすい。スプーンでなく指で与えるのはよい。
- 裏ごしにしたかぼちゃ、ニンジン、さつまいも、サトイモや、バナナ(1/2本を電子レンジで1分間加熱調理しフォークでつぶす)はお勧め。ホウレンソウや小松菜は調理時間が長く、食べた時に口の中に残りやすい。
- 便秘にニンジンの裏ごしは効果的。
- 5ヶ月(体重7kg)になったら半固形食の裏ごし野菜(煮たり電子レンジで加熱調理した後で、こし器などを使ってつぶした野菜)から始める。甘くておいしい。
- 裏ごしにしたかぼちゃ、にんじん、さつまいも、サトイモや、バナナ(1/2本を電子レンジで1分間加熱調理しフォークでつぶす)はお勧め。かぼちゃ、にんじんの裏ごしは母乳より甘い。
- お粥は味がないため、食べたがらない乳児もいる。裏ごし野菜とお粥をまぜて食べさせるのもよい。
- ニンジンは便秘にも下痢にも有効な食品。乳児の下痢にはにんじんうらごしと赤ちゃんせんべい。便秘にはにんじんうらごしとヨーグルトやにんじんうらごし入りの蒸しパンもよい。
- 100g/袋 ホリカフーズ 025−794−5536 にんじんうらごし、かぼちゃうらごし。
- 9ヶ月頃に食べ物から必要な鉄分が補えることが目標のひとつ
- 鉄分は卵黄、緑色野菜などに多く含まれる
- カルシウムは牛乳、大豆に多い。
- 乳児は4〜5ヶ月頃になるとHbFがHbAへと変換するため鉄分を多く必要とし、鉄欠乏に陥りやすくなる。生後9カ月頃になると食事に鉄を補う必要あり。
- 目的;1)母乳やミルクだけでは栄養不足である。2)咀嚼の練習。3)消化機能を発達させる。4)味覚を形成させる。5)食行動自立の基礎を作る。6)発達を促す。
- カルシウムの所領量は乳児期全体を通じて0.4g/日とほぼ一定しており、離乳が進まないからといって不足することはない。一方蛋白所要量は乳児の体重の増加と共に増加していく。蛋白所要量を3g/kg(成人は1.0g/kg)、乳児期後期の体重を8kgと仮定すると1日24gのたんぱく質が必要となる。これをもし母乳(蛋白含有量1.2g/dl)のみで補うことにすると、1日2Lの母乳を飲まなければならず不可能。
- 10ヶ月以降は鉄が不足しやすいため、赤身の魚や肉、レバーなどで鉄分を補う。
- 水分必要量はエネルギー必要量の1.2倍と考えるとよい。
初期離乳食
- 舌でとろける程度のもの。歯ぐきでつぶせるのは9〜12ヶ月。
5ヶ月〜6ヵ月(離乳初期)
- 1日1回。ドロドロ状のものを飲み込む口唇食べ。
- 卵黄も与えてよい(ただし注意して)。
- スプーンを嫌がる時は、奥まで入れないで舌先にうらごし野菜を載せるようにして離乳食を開始。
7〜8ヶ月(離乳中期)
- 1日2回。舌でつぶせる(舌の上下運動でつぶせる)食べ。
- 離乳食の後に母乳または育児用ミルクを与える。
9〜11ヶ月(離乳後期)
- 1日3回。歯ぐきでつぶせる。
- 離乳食からのエネルギーは60〜70%ぐらい。
12〜15ヶ月(離乳完了期)
- 咀嚼に関与する第一乳臼歯が萌出する。
- 牛乳またはフォローアップミルクを1日300〜400mLほど与える。
母乳
- 母親の肩こりが悪化すると母乳分泌量が低下する。ゆっくりとした入浴。肩もみ。パップ剤。四つん這いの床掃除(肩へ血行が促進される)
- 餅や小豆、大福は母乳分泌量が増えて、母乳の多い母親では乳腺炎につながるが、分泌量の少ない母親では母乳が増える効果が期待できる。
- 少量のビールは血行を良くする裏ワザであるが、あまりお勧めできない。
- 片方のおっぱいで5〜10分、両方あわせても授乳時間は20分以内である。
- 母乳栄養の欠点;1)ビタミンK不足による出血を起こしやすい。2)鉄欠乏性貧血になりやすい(6ヵ月以後)。3)母乳性黄疸になることがある。4)ビタミンDが不足しやすい。
- 授乳量は1回体重1kgあたり20mLぐらいが目安。生後半年まで1日1000mLぐらい飲む。
- カロリーは母乳も人工乳も100mLあたり60Kcalぐらい。
- 1歳時では1日900Kcal栄養として必要。
初乳
- 分娩後約1週間〜10日間分泌される母乳
- 成乳よりもたんぱく質が多く含まれる。
ミルク
- 慣らす方法として、眠くてお腹の空いた時間帯や入浴後に、粉ミルク4さじと砂糖1さじを100ccのお湯に溶かした甘いミルクを飲ませる。人工乳首を押し出す時はそこでおしまいにする。あきらめずに続けていると2週間程度でミルクを少しずつ飲むようになる。
- 2007年に粉ミルクを調乳する際のお湯の温度を70度以上にすることを勧めるようになった(細菌感染防止)。やけどに注意。
フォローアップミルク
- 9ヶ月以降(たんぱく質の量が育児用調整粉乳より多いので)の乳児に牛乳の代替品として与える育児用食品。鉄やカルシウム、ビタミンCを強化。(牛乳で過剰になるたんぱく質、ミネラルを減らした牛乳の代替品)(過剰なミネラルは乳児の未熟な腎臓には負担となる)
- 離乳食の量が全体に少ない、あるいは離乳食が糖質の多い食品に偏り、肉魚などのたんぱく質食品の摂取が少ない場合などに利用してもよいという位置づけのミルク
牛乳
- たんぱく質は母乳に比べて圧倒的に多い(母乳1.2g/dlに対し牛乳3.0g/dl
- 乳糖は母乳の方が多い。
- Ca/P比が母乳に比べて低いため、低Ca血症になりやすい。Feと不溶性の化合物を形成し、鉄の吸収率を3〜10%と極めて低くする(母乳中の鉄の吸収率は50%ときわめて高い)。
- 母乳の粒子は細かいので、胃内滞留時間は牛乳より短い。
- 1歳を過ぎるまではあまり多量に与えないように(鉄欠乏のリスクが高まる)。
- 牛乳は鉄が少なく、カルシウム、リンの含有量が多いので鉄の吸収を阻害する(不溶性の複合物を形成する)。鉄の吸収率は母乳が50%に対して、牛乳は3〜10%と低い。
- Ca/P比が母乳に比べて低いため、低Ca血症になりやすい。
- 牛乳の方が母乳より多くの電解質を含み、腎臓へは溶質負荷となる。
- 母乳の方が牛乳より粒子が細かく、胃内滞留時間は牛乳より短い。
豆乳
- 大豆のしぼり汁。調味料としては7〜8ヶ月から利用可能。飲料としては1歳以上に。
- カルシウムはほとんどない(牛乳との違い)けれど、鉄分は豊富。
- Glym4(グリエムフォー)がシラカバ科OASと交差抗原であり、アナフィラキシーの報告もある。軽く炒めたもやしにも含まれ反応することあり。
卵
- 離乳開始期には与えず、離乳開始1〜2ヶ月過ぎてから摂取。
- 9ヶ月以降卵黄の固ゆでを試してみる。
- 脂質は32%(中性脂肪が65%、リン脂質30%、コレステロール4%)。1日1個(50g)で約240mgのコレステロールを卵から摂ることになる(1日摂取量の約7割)。
- 離乳期初期としては、卵を固ゆでにして黄身と白身に完全に分け、黄身をつぶし、野菜スープやみそ汁でのばして食べさせるのが良い。
- 卵のゆで方;冷蔵庫から出した冷たい卵を湯に入れるとひびが入りやすいので卵は室温に戻してから使う。水に塩(湯の量の0.3%;水5カップなら塩小さじ1/2強)を加えると殻にひびが入ってもすぐに卵白が固まって外に流れ出るのを防げる。卵黄が中央になるように箸で1.5~2分程度静かに転がす。卵は水からゆでると沸騰まで時間がかかるので、また転がす時間も長くなるので60度のお湯からゆではじめる。固ゆでは静かに沸騰して10分。半熟は火を弱めて3分、卵黄の中心部が半熟になるのにはさらに5分ゆでる。
- 卵黄の縁が黒くなるのは、卵が古かったり、15分以上ゆでると卵白のたんぱく質中の硫黄を含むアミノ酸が、熱のため分解して硫化水素になって卵黄の鉄分と結合して黒くなるため。
- 卵のからの表面に石灰のような粉がついていて、ザラザラしているのが新しく、光沢のあるのは古い卵。1Lに60gの食塩水で浮けば古い卵で、沈めば新しい卵。
- 消化吸収機能が未発達な乳幼児期には増粘性多糖類を使った市販プリンは避けるようにする。
- 卵の調理での特徴は、その乳化性、熱凝固性、起泡性。
- アイスクリーム、カステラ、ホットケーキ、ビスケット、プリン、食パン、ハム、ウィンナーソーセージ、ちくわ、かまぼこ、はんぺんなどの魚肉加工品、水産ねり製品にも食材の一部として使われる。
魚
- 大切な蛋白源。小魚(しらす干し)、白身、赤身(ミオグロビンなどの筋肉色素の含量が異なる)、青背と進める。
- 赤身は煮ると硬くなる。
- 初期では、脂肪が少なくアレルゲンの心配もない白身魚(タイ、カレイ、ヒラメ、タラ、スズキなど)
- 中期では、赤身魚。但し脂肪分が多いところはすすめない。サケ缶、ツナ缶もあり。
- 後期では、青背(サバ、サンマ、イワシ)。アレルギーもあり得るので注意。最初はごく少量。脂肪分の少ない背の部分から。
- エビも離乳期後期から可能ですが、加熱では硬くなる。
- かまぼこなどはさっと湯通しすることで添加物が減り、同時に塩分も減らせるし歯ごたえも良くなる。
- カキや刺身は3歳以降。
野菜
- にんじん;ペクチンという食物繊維が含まれ、便を軟らかい状態で固める働きがあり、下痢の時でも安心して与えることができる。
乳幼児期に食べてよいもの悪いもの
- 胃腸の機能が大人並みになるのは3歳以降。
- 2〜3歳頃までは、腸の機能も未熟なため、刺身や生卵を与えてはいけない。
おやつ
- アイスクリーム、シャーベットは急がずに。1歳以降でも極少量。
めん
くだもの
- トロピカル系はゆっくり。メロンは早くから可能といわれますが、つぶしやすい赤肉系から。
- 果汁は5か月から可能。便秘の時はみかんなど柑橘類の果汁は便利。
- 市販の果汁100%ジュースは、糖分が多く添加物を含むので与えない。
牛乳
- そのままは1歳以降
- アレルギーが気になる場合加熱してから(1歳未満も加熱してであれば7カ月から可能)。
- 牛乳に変更すると、鉄分が不足しやすい。
- 牛乳の過量摂取はCa/P比が母乳に比べて低いため、低Ca血症を起こしやすい。
下痢の時の食べ物
- にんじんにはペクチンという食物繊維が含まれ、便を軟らかい状態で固める働きがあり、下痢の時でも安心して与えることができます。軟らかく調理したニンジンは消化されやすい。
- 皮をむいたかぼちゃや大根、かぶ、ホウレンソウの葉先などは線維が少なく腸を刺激しません。軟らかく煮てつぶしたり、細かく刻んだり、裏ごしたりすると安心。
食物アレルギー
- 定義;食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象(食物アレルギー診療ガイドライン2012)
- 即時型症状として、じんましんなどの皮膚症状、喘鳴や呼吸困難などの呼吸器症状、腹痛嘔吐下痢などの消化器症状、これら症状が同時に出現するアナフィラキシーなどがある。
- 乳児の食物アレルギー有病率は、5〜10%。性別では男児が女児の2倍多く、アトピー性皮膚炎をもつ乳児の約70%は食物アレルギーを合併します。両親のアレルギー歴もリスクファクターの一つですが、花粉症を含めると、子供の60%以上はアレルギー家族歴を持つことになります。乳児湿疹とアレルギー家族歴を持つ併せ持つ場合、食物アレルギーを発症するリスクが高いといえますが、どちらの要因ももたない乳児は、全体の25%に過ぎない。
- 頻度 乳児期5〜10%。幼児期約5%。学童期1.3〜2.6%。国民全体では1.2%の有症率
- 間違いやすい違う病気;食中毒、食物不耐症(乳糖不耐症など)、仮性アレルゲン(薬理活性物質)。食物アレルギーでは過敏な反応に免疫システムが関与している。
- 2007年の文部科学省による報告では、「アレルギー疾患はまれな疾患ではなく学校保健を考える上で、既に、学校に、クラスに、各種のアレルギー疾患の子供たちが多数在籍しているということを前提としなければならない状況になっている」とされ、集団生活においての対策が急務であることが示され、2008年に幼稚園・学校を対象に「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」および「学校生活指導管理票(アレルギー疾患用)」がまとめられ、保育所に関しては、2011年に厚生労働省より「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」および「保育所におけるアレルギー疾患生活指導管理票」が発表された。
- 2013年8月、学校生活における健康管理に関する調査 中間報告では、小学中学高校で4.5%の食物アレルギー、アナフィラキシーが0.5%、エピペン保持者27312名(0.3%)であった。
分類
新生児・乳児消化管アレルギー
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎
即時型症状 蕁麻疹、アナフィラキシーなど
特殊型 食物依存性運動誘発アナフィラキシー、口腔アレルギー症候群
原因食物
- 3大原因食物は鶏卵、牛乳、小麦であり、原因の2/3を占める。上位10原因で90%を占める。
- 上位10品目;鶏卵、乳・乳製品、小麦、ピーナッツ、いくら、エビ、そば、大豆、キウイ、カニ
- そば、ピーナッツは重篤なアレルギーを起こし得る。
- 近年キウイやイクラが原因として増えている。イクラは1〜3歳児の新規発症例で鶏卵に次いで2番目に多い。
- 魚介類、ナッツ類、ゴマのアレルギーは加齢による耐性獲得は少なく、いったん耐性を獲得しても再発することがある。
診断
- ゴールドスタンダードは負荷試験。(聞き取りのもでは?。負荷して証明できるのはその一部のみ)
- 正確な診断には食物経口負荷試験(oral food challenge test;OFC)が必要であるが、重篤な症状が誘発される可能性があるため、専門施設での実施が望ましい。
即時型アレルギー
- 原因食物を摂取して2時間以内と定義。多くは30分以内。
- 症状は皮膚・呼吸器・消化器・粘膜症状など多彩で、これらが多臓器かつ全身性に現れた時はアナフィラキシーと定義されている。
- 食物アレルギー/アトピー性皮膚炎で発症した症例でも、離乳食を開始すると約半数は即時型にタイプが変わっていく。
- アナフィラキシー(血圧低下や意識障害を伴う場合)は生命を脅かす危険な状態。即時型の7〜10%との報告も。
- 2005年、玉置らによりアナフィラキシーの関与が推測された4人の死亡例が報告されている。症例はチョコレート(4歳)、甘エビ(23歳)、そば(56歳)、マグロ(62歳)であった。
- 1988年、札幌でそばアレルギーの児童がそばを食べた後にアレルギー症状が出現し、帰宅途中に亡くなって以来、食物アレルギーが注目されるようになった。厚生労働省はこれを契機に食品衛生法施行規則を改定し、2001年4月より抗原食品の中から小麦、そば、卵、牛乳、落花生の5品目を含むものへの表示を義務付けた。
- 2006年7月、横浜市で児童相談所における3歳男児の卵白含有ちくわ誤食による死亡
年齢
- 乳児期では鶏卵が約6割、乳・乳製品が約3割。
- 学童期では鶏卵が約2割、小麦、甲殻類
- 成人 では小麦、甲殻類、果実(キウイ、バナナ、リンゴ、モモ、メロンなど)で全体の約6割。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(WEDIA;sheat-dependent exercise-induced allergy)
- 特定の食物(小麦、果物と甲殻類、イカが多い)を摂取後2〜3時間以内に激しい運動(ランニングや球技)をしたときに出現する。
- 原因食物摂取によりアレルギー準備状態となり、これに運動刺激が加わり(腸管粘膜からの吸収量の増加)、肥満細胞からのヒスタミン遊離、アナフイラキシーに至ると考えられている。
- 男女差はなく、若年者に多いが中高年にも認められる。日本の中高生の有病率は0.012%
- IgE抗体価はグルテンよりもω-5グリアジンに対して高いとされる。
- 一部の症例ではアスピリンなどのNSAIDsが発症に関与するため、服薬歴の確認が必要。(他にサリチル酸製剤など食品添加物、アルコール飲料、入浴で症状が悪化することもある)
- 原因食物摂取から2時間(可能であれば4時間)は運動を避けることが勧められる。原因食物を摂取しなければ運動は可能である。
- 小麦加水分解物含有石鹸(茶のしずく)で小麦アレルギーが発症したが、この中で多数の報告がある。
- 小麦製品が60%、エビなどの甲殻類が30%とされているが、果物や野菜などの報告もある。鶏卵や牛乳では稀である。
口腔アレルギー症候群(OAS)
- 花粉症の増加とともに特定の果物を摂取した場合に、のどや口腔の痒み、口唇の浮腫を訴える子供が増えている。口に入れた直後に症状を感じることが多く、その時点で摂取を中止すれば重篤な症状は回避できるため、ある程度は本人の自己判断で管理することが可能。
- 口腔粘膜に限局したIgE抗体を介した即時型アレルギー。30分以内にはじまる。
- シラカバやハンノキなどの花粉によって経気道的に感作が成立し、それらと交叉抗原性を持つ果物や野菜が主要な原因食物となる。
- カバノキ科ハンノキ属(ハンノキ)・カバノキ属(シラカンバ)はバラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボ等)
- イネ科とブタクサはウリ科果物(メロン、スイカなど)
- ヨモギはセリ科野菜(セロリ、ニンジンなど)と交差反応しやすい。
- ラテックスアレルギーではアボカド、クリ、バナナなどと交差反応してアナフィラキシーを誘発する場合がある。
- 診断としては、果物・野菜そのものを用いたprick to prick testが有用である。
- ブタクサ花粉症はバナナと反応しやすい。
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎
- 小児期食物アレルギーのタイプとして最も頻度が高い。
- スキンケアやステロイド療法を行っても、寛解・増悪を繰り返し改善が見られないのが典型例である。
- 乳児期アトピー性皮膚炎の74%が食物アレルギーを合併していたとの報告もある(池永氏)。
- アトピー性皮膚炎の中で食物アレルギー合併率は乳幼児では約40%で、成長に伴い次第に減り学童以上では10%以下となる。
- 3歳までに5割、小学校入学までに約8〜9割が寛解する。
管理と予後
- 正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去が食物アレルギー管理の原則である。
- 第一;食べると症状が誘発される食物だけを除去する。
- 第二;原因食物でも症状が誘発されない(食べられる範囲)までは食べることである(耐性獲得面も)。
- 乳幼児期発症の食物アレルギーの多くは自然に耐性を獲得していくので、OFCは3歳未満では半年〜1年、3〜5歳では1〜2年、6歳以上では2〜3年の間隔で行うことが望ましい。
- 牛乳、卵アレルギーはほとんどの乳幼児が耐性化(半数は2〜3年以内)。
- 大豆、小麦、鶏卵、牛乳の順に耐性を獲得しやすい。
- ピーナッツ、ナッツ、魚介類のアレルギー患者の約80%は生涯アレルギーを保有し続ける。
検査
- 生後6カ月まで陰性のIgE抗体がそれ以降陽性になることがあるので、生後半年までは検査を勧めなかったが、重い湿疹をもつ乳児の多くは生後2〜3ヶ月でも高い抗体価を示すことあり、積極的な検査もあり得る。
RAST
- 牛乳と卵に対しては信頼性が高いが、他の食品での精度は高くない。
対応
- 誤食などで明らかな誘発症状を経験した場合は、約1年間除去を継続したうえで経口負荷試験を検討します。
- 鶏卵、牛乳、小麦などで特異的IgE抗体価がクラス3以上であれば、1歳過ぎまでは暫定的に除去をしたうえで食物経口負荷試験を行って摂取を開始します。クラス5〜6では、負荷試験陽性率が高くリスクを伴うため、一般的には除去を継続します。
- 鶏卵アレルギーでの卵殻カルシウム。牛乳アレルギーでの乳糖。小麦での醤油、酢、麦茶。大豆での大豆油、醤油、味噌。胡麻でのゴマ油。魚でのかつお出し汁、いりこ出し汁。肉類でのエキスなどは除去が必要でないことが多い。
- 2002年4月から食品衛生法の改正によりアレルギー物質を含む食品の原材料表示について、義務付けされた。特定原材料として7品目;卵、乳、小麦、落花生、そば、えびとかに(2008年に追加)。また症例数や重篤度は特定原材料に及ばないものの報告数の多い20品目(バナナは2004年、ゴマと歌集ーナッツが2013年に追加)が指定されています。
学校
- 平成20年(2008年)に「学校生活管理指導表」およびその解説書である「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」が財団法人日本学校保健会から発刊された。
- 平成27年4月から京都市では日本学校保健会の学校生活管理指導表を一部改定したものを使用。アレルギー性鼻炎を削除し食物アレルギーに特化したものになっている。食物アレルギーはあるものの除去が必要なければ、管理指導表の提出は不要。この指導表が提出されると、食物アレルギー対応委員会が設置され、管理指導表と保護者からの食物アレルギーに関する調査と保護者との面談記録を併せての検討によって、児童ごとの除去食実施の方針、個人別緊急対応マニュアルの策定、学校職員間での情報共有が行われます。
- 2010年4月に改定版「保育所・保育園で役立つアレルギー対応マニュアル」が発行。診断書と新たに食物アレルギー食事指示書(変更届)および卵・牛乳・小麦・大豆アレルギー児の摂取可能食品表
- 完全除去か完全解除かの2通りで対応することが基本(卵黄解除とかつなぎ解除では人為的な誤りの危険性を上げる)。学校給食で目指すべきは、十分な栄養の享受は2番目であり、最も優先されるべきは安全性である。
- 除去食、代替食(理想的)、弁当対応、献立対応
- 平成14・15年度に全国の学校栄養士を対象とした調査では、学校給食で発症した食物アレルギーの約60%は新規の発症であった。
- 2015年(平成27年3月)、文部科学省より「学校給食における食物アレルギー対応指針」がまとめられた。平成25年5月「学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議」を設置。26年3月に最終報告;ガイドラインに基づく対応の徹底、教職員に対する研修の充実、緊急時におけるエピペンの活用、関係機関との連携体制の構築と、これら具体的な対応のための疱疹の策定など、国、教育委員会、学校などがそれぞれ主体的に取り組むべき事項が記されている。
エピペン
- 2005年3月から承認(それまではハチアナフィラキシーのみで適応であった)。ペン型の仕掛けの注射器で0.15と0.3mgの製剤があり、誰でも簡単に大腿の外側にズボンの上からでも注射できる。
- 使用するタイミングとしては喉頭浮腫や下気道の狭窄による呼吸困難などが出現した時が適応である。
- 平成21年(2009年3月)から救急救命士が業務として使用することも可能になっている。
- 平成20年(2008年4月)から教職員による注射はその行為を妨げない方針が国からうちだされている(事前の依頼書や同意書の作成は必要ない)
卵
- オボムコイドは卵白の11%を構成する(60%はオボアルブミン)。オボムコイドは加熱によっては凝固せず、酵素消化によってもアレルゲン性が低下しにくい。オボムコイドに反応のある鶏卵アレルギー患者は、生のみでなく加熱処理した鶏卵摂取によってもアレルギー症状が誘発されやすい。
- オボムコイド特異的IgE抗体が10.8Ua/mL以上の場合には、加熱卵摂取による症状誘発の可能性が高くなる。卵白特異的IgE抗体が強陽性でもオボムコイドが陰性あるいは弱く反応している症例では、加熱卵を接種摂取できる可能性は高いためOFCを考慮すべきである。
- 卵白アレルゲンは他の鳥の食用卵にも同様のたんぱく質があるため、交叉反応性が高い。
- 塩化リゾチームは卵白由来の成分であり、ノイチームやレフトーゼは注意が必要。
- 4〜4.5歳までに約50%が耐性を獲得する。
- 卵白の88%は水分で、残りの大部分は40種類以上のたんぱく質から構成される。鶏卵のアレルゲンは主に卵白に存在する。
- 卵白たんぱく質の50%を占め、最も含有量の多いオボアルブミン(OVX)は加熱による変性を受けて凝縮することでIgE抗体結合能が低下しやすい。(12分固ゆでで0.01%)
- ウズラなど他の鳥類の卵との交叉反応性は強いが、鶏卵と魚卵との交叉抗原性は認められない。
- 揚げ物の場合には素揚げにしたり、衣は小麦粉と水で調理する。つなぎには馬鈴薯やでんぷんを代替えにする。起泡性については、ベーキングパウダーを用いた代替が可能であることが多い。
- 卵ボーロ1個中に含まれるOVA量は固ゆで卵1個分よりも大きく、固ゆで卵1個の経口負荷陰性であっても卵ボーロにより症状が誘発されることがあり注意。アレルゲンとしてはカステラよりも強い。小麦不使用でとうもろこしでんぷんが使用されている。
- 鶏卵負荷;パン、クッキー類ー>カステラなどのケーキ類ー>練り製品(ちくわ、はんぺん)ー>ハンバーグなどのつなぎ類の順に進めていく。
牛乳
- 脱脂乳にほとんどの蛋白は存在。脱脂乳は酸性で沈殿するたんぱく質画分であるカゼイン(不溶性)と、その上清中の画分である乳清(ホエー)(水溶性)に分けられる。
- カゼインはコロイド性リン酸カルシウムを介してカゼインミセルとして存在し、乳中でコロイド粒子として分散している。牛乳が白く見えるのはカゼインミセルに光が反射するためである。
- カゼインは加熱による低アレルゲン化が起きにくいので、添加物として用いた加工食品にも注意する(乳清内のラクトグロブリンは熱に弱い)。S-S結合を持たずに強固な三次元構造をとらないので加熱による影響を受けにくい。
- カゼインは消化酵素により加水分解され抗原性が低下するため、耐性獲得ができたと思われる症例でも、運動や入浴など消化が不十分になる状態では症状が誘発されることがあり、注意が必要である。
- βラクトグロブリンは球状タンパク質であり、加熱により球状構造がほぐれ抗原性が低下する。72.8℃で変性するとされている。小麦により不溶化が起こるため、パンや焼き菓子中のβラクトグロブリンの抗原性は低下している。
- タンニン酸アルブミン;タンニン酸と乳清カゼインからなる。アレルギー患者に投与してはならない。
- 乳酸菌製剤;乳酸菌培養段階の培地に脱脂粉乳を使うエンテロノンR、コレポリーR、ラックビーRは使用しない。培地に脱脂粉乳を使用していないビオフェルミン(R)、ビオスミン、レニベン、ミヤBM、ビオスリーは使用可能。
- 経腸経口栄養剤はカゼインを含み注意。
- 乳糖;乳糖自体にはアレルゲン性は認めないが、微量の乳清たんぱく質(主にβラクトグロブリン)が残存している。きわめて微量でも症状が出現する患者では使用を控える方が安全。吸入薬ではアドエア、シムビコート、フルタイド、イナビル、リレンザが乳糖を含有する。パルミコートは含有していない。重篤な牛乳アレルギー患者では様々に安定剤としてワクチンに乳糖を含むので注意。
- 牛乳除去中の児ではカルシウム不足に注意。
- ヨーグルトやアイスクリームは豆乳を用いたもので代替できる。
- IgE抗体が関与する症例では3歳までに50%が耐性を獲得(関与しない症例はもっと)
- バターはたんぱく質含有量は0.6%(乳製品ではあるが脂のかたまり)、牛乳の1/5の量。牛乳10cc飲めればバターは50グラム使えるということ。ヨーグルトは牛乳と同じぐらいの蛋白量(3.3%)。チーズは蛋白量が22.7%。牛乳10ccに匹敵するチーズは1.5g。(チーズ10gは牛乳70ccに匹敵する)
- バターは牛乳3ccが飲めると使える。25cc飲めるようになるとパンや乳酸菌飲料などの加工食品が摂取できるようになる。
- 牛乳のアレルゲンは山羊乳、羊乳と強い交差反応性あり。
- 牛乳のカルシウムは吸収率が高く、また一度にたくさんのカルシウムを摂取できる最良のカルシウム食品である。次に吸収率の良いのが豆腐などの大豆製品であり、次に魚介類、野菜海藻類の順。
小麦
- 塩不溶性画分はグルテンと呼ばれ、さらにグリアジン画分とグルテニン画分に分けられる。グリアジン画分の最も重要なアレルゲンはω-5グリアジンである(特にアナフィラキシーに関与)。
- グルテン使用品に注意。加熱による低アレルゲン化は不十分であり原材料として使用しない(焼き菓子はダメ)。小麦の使用量が少ない天ぷら、フライの衣やカレー、シチューのルウなどの除去も必要になる。
- 醤油の原材料としての小麦は、通常症状を惹起しない(醤油を作る過程で完全に分解されている)。麦茶も飲めることが多い。(しょうゆ、みそ、酢などは発酵により蛋白が分解されている)
- 代替は米あるいは米粉でできる。ただし米粉パンは小麦グルテンを使用している製品もあるので注意。
- 4歳までに59%が耐性を獲得し、6歳までに69%、8歳までに96%が耐性を獲得との報告がある。
- 粗抗原である小麦特異的IgE抗体価は陽性的中率が低い。ω-5グリアジン特異的IgE抗体価は小児の即時的小麦アレルギーにおいては陽性的中率が高い(陰性の場合でも約30%の症例でOFC陽性となるため、自宅での摂取には注意が必要)。
- グリアジンは欧米の先天性疾患であるセリアック病の原因蛋白である。
- オオムギ、ライムギは交差反応性が強い。オーツ麦はグルテンを含まず利用しやすい。
そば
- 他の穀類がイネ科に属するのに対し、タデ科の食物。罹患率は喘息患者の1.46〜0.45%。
- 誘発症状としてショックの割合が高いことから、学校給食ではしようされない食品。
- そばの主要たんぱく抗原は熱安定性であり、加熱調理後も抗原性が維持される。
大豆
- 味噌、醤油、大豆油は使用可能なことが多い(製造の過程で大部分のたんぱく質が分解されるため)。大豆製品は多種類存在し、個人により摂取可能な食品が異なる。
- 食品により抗原性が異なり、豆腐や豆乳は抗原性が高く症状を誘発しうるが、発酵食品である味噌、醤油や少量含まれている食品ではあまり発症しないことがある。
- RAST;大豆の場合は主要抗原の一つを判定しているに過ぎないので50〜70%程度しか陽性にならない。(陽性になっても完全排除する必要はない)
- 世界的には油脂としての消費が最も多い食物。日本ではみそ、しょうゆ、豆腐、納豆などに古くから利用されている。アナフィラキシーの報告は稀。
- 大豆たんぱくの抗原性の変化は、加熱処理しても軽減されないが、発酵により低アレルゲン化される。したがって湯葉、凍り豆腐、きな粉、油揚げなどには高濃度の大豆の主蛋白が検出されるが、納豆、しょうゆ、みそなどの発酵食品には検査されない。
魚介類
- エビカニやタコイカの主要アレルゲンはトロポミオシンである。軟体動物アレルギー患者の多くは、甲殻類アレルギーを併発する傾向がある。(えび、かに、いか、タコすべてに。貝類も甲殻類に分類上近くアレルギーを起こしやすい)。魚類と甲殻類には交差反応はない。
- 重症でない限り出汁の摂取は可能であることが多い。
- ビタミンDの不足に注意;卵黄やアレルギー用ミルクで代替できる。ビタミンDの多い食品にはきくらげ、しめじ、シイタケがある。
- エビ特異的IgE抗体価の診断的中率は、クラス3〜4であっても20%以下。
- えびせんべい、かっぱえびせんなどは約80%の患者が食べても症状がないと言われている。
- カニカマは、主成分はスケトウダラなどのすり身であるが、カニのエキスが加えられている場合があり注意が必要である。
- 魚間での交差反応は非常に強く、同時に多種類の魚にアレルギーを示す傾向がある。白身魚の主要アレルゲンは筋組織のパルブアルブミンで、他の魚との交叉反応の主要原因。
- 魚のアレルゲンは高度熱耐性。燻製、缶詰の加工過程でアレルゲン性は低下しやすく、かつおぶし、シーチキンなどは利用できることが多い。干し魚もアレルゲン性は低下している。
- 生いくらによる幼児のアナフィラキシーが増加している。
ヤマイモ
- 饅頭、お好み焼きの材料、とろろ
- 即時型アレルギーもある。
- アセチルコリンという仮性アレルゲンが含まれている。摂取して口の痒みを訴える例や、ヤマイモに触れ皮膚のかゆみを訴える症例は多いが、これらのすべてが食物アレルギーであるというわけではない。
ピーナッツ ナッツ
- 自然寛解率は20%程度。ナッツ全体では9%程度(長期間の除去が必要)
- アーモンドやクルミを食べられる可能性はある。
- 誤食が増えると重症化する傾向があり、エピペンの積極的所持が必要。
- コンポーネントにはArah1~11が存在。
- 小麦と異なり粗抗原であるピーナッツ特異的IgE抗体価の診断効率は高い(Arah2抗体価でさらに感度と特異度が上がる)
- 乳児期発症症例は治っていく場合がある。
- 欧米のアナフィラキシーショックの主要アレルゲン。年間100例の死亡例の8割がピーナッツによるとされている。アレルゲンは熱抵抗性。特にローストピーナッツではアレルゲン性が生より3倍以上に高まる傾向があり、これらを利用したピーナッツバター、菓子類、料理では注意が必要。
ゴマ
- 自然寛解率は20%程度。
- アナフィラキシーを起こすことがあり注意が必要。
- IgE抗体との関連低く、プリックテストの方が有用。
- 主要アレルゲンはピーナッツと80%の相同性。ライムギ、ヘーゼルナッツ、キウイ、クルミ、ピーナッツ、ソバなどと交叉反応性。
- ごまを一度に大量摂取するすりごま、ごまペーストには注意が必要。黒ゴマは白ゴマより蛋白が少なく、利用する場合は黒ゴマからはじめる。
肉
- 卵、牛乳アレルギーでも鶏肉、牛肉は利用できる(アレルゲンが異なる)
- 牛肉には耐熱性の蛋白があり、加熱しても症状が出ることがある。
導入順序
- 卵;1)固ゆで卵黄、2)卵クッキー、3)カステラ、4)かまぼこ、卵ボーロ、5)ハンバーグ、6)ゆで卵
- 牛乳;1)ペプチドミルク、2)乳ビスケット、3)乳入りパン、4)シチュー、5)ヨーグルト、6)牛乳
- 大豆;1)調味料、2)納豆、3)豆腐、4)煮豆、5)きなこ
- 小麦;1)調味料、2)オーツ麦、3)オオムギ、4)低アレルゲン小麦、5)うどん
- 魚;1)かつおだし、2)缶詰、3)干し物、4)つみれ、5)魚料理
ヒスタミン中毒
- サバ、マグロ、サンマなどの魚の筋肉中に高濃度に含まれている遊離ヒスチジンが原因となる。鮮度が落ちると感染する細菌のヒスチジン脱炭酸酵素によってヒスチジンがヒスタミンに変えられることでヒスタミン中毒が起きる。
アニサキスアレルギー
- 魚に対して60℃以上の加熱を20分以上行ったり、冷凍を48時間以上行うことで避けられる。
乳糖不耐症
- 日本人の成人は本来、一次性乳糖不耐症であるが、乳児では小腸へのラクターゼ分泌を認める。
- 抗生物質による常在細菌の減少による下痢は少ないと考えられる;骨髄移植の抗生物質による消化管前処理では下痢は少ない。
- 二次性乳糖不耐症は感染症によってラクターゼ分泌が低下することによって起こると考えられる。
- ラクターゼ製剤の適応;ミルラクト(シオノギ)、オリザチーム(ヤクルト)、ガランターゼ(三菱ウェルファーマ)、ラクチーム(わかもと)。使用量は摂取乳糖10gに対して1gを使用。一般に母乳栄養児の場合、少量の微温湯に0.25〜0.5gを溶解して哺乳毎に与える。調乳の場合は直接本剤を溶解して使用するが、酵素活性を損なわないように50℃以下で混入する。(1)
新生児・乳児消化管アレルギー
- ミルクや母乳中の食物蛋白が原因となり、新生児や乳児が血便下痢などの消化器症状を起こす病気。IgE抗体の関与は少なく、細胞性免疫が重要と考えられています。
- 人工栄養児において発症する消化器症状を中心とする食物アレルギー。特異的IgE抗体は陰性であることが多く、主要な機序はIV型アレルギー反応と考えられている。
- 血便、嘔吐、下痢などを呈するため鑑別が必要。
- 調整粉乳が原因であることが多く、代替ミルクとして牛乳アレルゲン除去調整粉乳やアミノ酸調整乳を用いることで症状は軽快する。これら加水分解乳の導入などで適切に対処すれば、多くの症例は1歳までに耐性を獲得する。
- アミノ酸乳を長期用いると、ビオチン、セレン、カルニチン不足になることに注意。
- 1歳までに約70%、3歳までに約90%以上が寛解する。
- 症状は嘔吐、血便、下痢、腹部膨満などであるが、体重増加不良が唯一の症状のこともある。
- 原因食物は、牛由来乳蛋白95%、母乳20%、米10%、大豆10%、鶏卵5%、その他は1%未満とされほとんどない。
アレルギーの寛解
- 自然寛解は大豆では大幅に減る。卵アレルギーは2〜3歳で20〜30%程度減る。
衛生仮説
- CD4陽性T細胞にはいくつかの種類がある。今はアレルギーの主体ですが、昔は寄生虫を攻撃する役割を担っていたTh2、細胞内微生物を攻撃するTh1、自己免疫に関係するTh17、自己免疫を抑えるTreg。
- BCGワクチン投与を受けたり、兄弟が家庭にウイルスを持ち込んだり、農家などで様々な動物から多くの刺激を受けると、Th1が優位となりTh2が軽くなるためアレルギーが減るという考え方。
参考
(1)日本医事新報 No4220 110-112