01-16;小児皮膚
伝染性膿痂疹(とびひ)
- 局所の清潔は大切で、風呂に入って石鹸でこすらずにきれいにするのは基本。
- その後皮膚刺激のない消毒薬(しみないタイプ)を使い、乾いたら抗生剤軟膏(ゲンタシンは効かない)を塗布。
- 痒みに対する管理、掻きこわしを防ぐことは大切。
- バンドエイドでは中で蒸れて必ず悪化、通気性のよい物で覆う。
口周囲湿疹
- 発赤を伴う時はステロイドを使用する(ClassIV)。効果が足りなければ頻回に。一日20回以上、30分おきも可能。軽快すれば清潔と保湿を中心にケア。
おむつ皮膚炎
- 鑑別にカンジダ、溶連菌、亜鉛欠乏(機械的刺激が加わりやすい眼周囲、口周囲、鼻、陰部、肛門周囲や肢端部や肘膝に膿痂様から乾癬様病変。ひどいと脱毛や下痢も)
スキンケア用品
肛門清拭剤;花王サニーナ
- オイルベースであり、排泄物を拭き取る際の摩擦刺激が少ない。また排泄物の汚れを浮かせ除去しやすい。
撥水剤;スミスアンドネフュー セキューラ。ジョンソンアンドジョンソン
- 液状やクリームタイプのものがあり、尿や便を撥水して皮膚への付着を防止。
皮膚保護剤;ホリスター コンバテック
- びらん部につける(粉状やシート状がある)。pH緩衝作用により排泄物の刺激を低下させる。
皮膚被膜剤;アルケア スリーエム
- 皮膚に被膜を作り、排泄物が直接皮膚に付着するのを防ぐ。
ポリエステル繊維綿;帝人ファイバースキンクリーンコットン
- 臀裂にはさみこみ、おむつに吸収されるまでに排泄物が皮膚に付く前に透過させる。
ウイルス性疣贅
尋常性疣贅
- 液体窒素では色素沈着を残すことあり、頸部などでは放置するのも方法
青年性扁平疣贅
伝染性軟属腫(水いぼ)
- 細胞性免疫により自然治癒するが数カ月から数年を要する。
- 潜伏期は長く7週間ぐらいもある。
- ヨクイニン内服もよく行われるが、二重盲検比較試験でプラセポとの差はなかったという報告がある。
- 白色のまま増加傾向がある時は一部でもトラコーマ鑷子によって摘除する。多発してからではすべてを取ることは困難である。赤い反応があれば免疫による拒絶はあると思われる。
白斑
尋常性白斑
- 後天的に免疫反応なのでメラノサイトが障害されて生じる
貧血母斑
脱色素性母斑
色素斑
- メラニンが表皮の基底層にあると褐色に見える。(より浅いと黒色、深いと灰色、さらに深いと青色)
蒙古斑
- 1歳頃より消え始め、5〜6歳で消失することが多い。
- 生後2週以内の新生児では、蒙古斑は四肢にも認められる。
異所性蒙古斑
- 身体のどこかに異所性蒙古斑が残っている人は健康成人の4%ぐらいといわれています。手背や腕、脚などの露出部位にあって色が濃い場合には、Qスイッチルビーやアレキサントライトレーザーによってほぼ消退させることができます。
丘疹(1cmまで) 結節(1〜3cm) 腫瘤(3cm以上)
結節
- 脂腺母斑;頭皮に脱毛して存在。後に他の腫瘍を作るので10代で切除
紅色結節
血管腫
- イチゴ状血管腫;5〜7歳までに消退する。眼球周辺(開眼に影響)、生後6カ月後も増殖傾向、自然消退の期待しにくい口唇にできるものでは治療
- 出生時はみられず、生後2週〜3ヶ月後より紅色の小丘疹が多発して始まる。
黒色結節
母斑
正中部母斑
- 新生児期の20〜30%に。境界不鮮明で隆起しない薄い紅斑。毛細血管の拡張。
- サーモンパッチは眉間、前額正中部、人中などに生じるものをいい、ほとんど2歳までに消失。
- Unna母斑;項部で生じる。多くの場合成人まで残る。
単純性血管腫(ポートワイン母斑)
- 出生時から認められる隆起赤色斑。真皮上層の小血管の拡張。新生児の1.5%に認められ、全血管腫の45%。加齢とともに濃くなったりでこぼこしたりする。自然消退はせず色素レーザー照射。
イチゴ状血管腫(結節の血管腫参照)
水疱
中毒疹
腫瘍
色素性じんましん(肥満細胞腫)
- Darier徴候;擦るとその部位にじんましん
- 乳幼児期に発症するものは数年経過の後に自然消退することが多い。
- 発作時に痒みの強い膨疹が出現。多数の褐色色素斑を認める。
アトピー性皮膚炎
- 強い掻痒を伴う慢性(増悪・寛解を繰り返す)の湿疹性疾患
- アトピー素因(アレルギー反応を起こしやすいアレルギー素因と、ドライスキンによる非アレルギー素因)に基づく慢性炎症性疾患
- アトピー;環境に存在するほこり、ダニ、カビ、花粉などのアレルゲンに対してIgE抗体を産生しやすい体質。
- 多くの症例に気管支喘息やアレルギー性鼻炎の合併が認められる。
- 自然寛解については2〜3歳頃からみられ、8〜9歳では50%に達し、16歳を過ぎると全体の90%が自然寛解する。
- 有症率は幼児期から学童期にかけて11%前後(1980年代に比べて増加しているが、近年ではその傾向は鈍化)
- アトピー性皮膚炎がある児では、ない児に比べて喘息発症リスクは3.9倍
- アレルギーマーチはフィラグリン遺伝子変異群に高頻度に見られる?
- 2歳までに発症する例が80%以上を占める。
- 多くは乳児期に発症し、思春期までにほぼ寛解するので、小児期の皮膚疾患としてとらえられてきた。近年は学童期から、成人まで遅延するアトピー性皮膚炎が増えている。
診断
- 1)掻痒を伴い、2)慢性に経過し、3)特徴ある湿疹病変があって、4)目、鼻、気道アトピーの既往歴や家族歴があれば診断は比較的容易である。
症状
- 幼小児期;乳児期からそのまま移行するもの、2〜10歳に初発するものがある。体幹皮膚は乾燥し、四肢屈側に苔癬化局面(掻痒の強い小丘疹の集簇、融合)が見られます。初診の際に掻破痕が確認できる。乳児期と異なり、掻破で生じたびらん痂皮以外は乾燥性です。多くは10歳前後で軽快治癒。皮膚以外にも毛孔に一致した細かい皮疹(鳥肌様皮膚;atopic
dry skin)が見られる。
- 思春期、成人期;幼小児期で発症し、一度軽快したにもかかわらず、思春期以降で突然再発増悪を示す。皮膚所見は基本的には幼小児期と同じも、多くは苔癬化局面はより著明で、範囲も広い。
- 頬部に白色の色素脱色(はたけ;単純性粃糠疹)が見られる。
- 皮膚病変は、年齢によって変化する。幼小児・学童期では乾燥病変が主体となってくる。肘窩、膝、腋窩周囲、頸部では繰り返される掻破によって表面が肥厚(苔癬化)してくる。
プール
- 塩素は皮膚角質のたんぱく質や脂肪と反応して皮膚バリアを低下させることがある。乾燥状態で入るのは良くない。治療をしてからが良い。一方で演奏は黄色ブドウ球菌を殺菌する作用もある。プール後は水道水で身体を流し塩素を落とすこととスキンケア(保湿)が必要
- 感染症がある間はダメ。
ポイント
- 1)患児が皮膚症状を理解しているか 2)外用療法やスキンケアなどによる皮膚の自己管理ができているか 3)季節や家庭環境などの中に増悪因子がないか 4)接触皮膚炎などによって皮膚症状が悪化していないか 5)眼症状や皮膚感染症など合併症が発症していないか 6)患者本人が診察を受けているか(薬だけになっていないか) 7)患児が周囲から精神的圧迫を受けていないか
対応
- 1)石鹸の使用 2)入浴時の注意 3)運動(慢性的に汗がたまる場所、擦れるところ)(紫外線) 4)室内の清掃 5)暖房の位置(乾燥に注意)
神経線維腫症1型(NF1;neurofibromatosis type1)(レックリングハウゼン病)
- 神経堤由来のメラノサイトやSchwann細胞の異常から、皮膚、神経、眼、骨に多彩な症状が現れる母斑症。
- 側彎;思春期以降
- 神経線維腫;95%以上の患者に見られるが、発現の多くは学童期思春期以降で、その後増加多発を見る。Schwann細胞と線維芽細胞の異常増生によるもの。
- 神経線維腫のうち、弁状下垂を呈するびまん性蔓状線維腫は、脆弱な血管が豊富にあり、手術時の大量出血には注意が必要である。
- 神経線維腫が急速に拡大してきた際には悪性末梢神経鞘腫(2〜5%の患者で悪性化)を考慮する。
- カフェオレ斑;出生時から見られ、遅くても2歳までに出現。10歳前後から急増する。雀卵斑様の小さな褐色斑(小レックリングハウゼン斑)は幼児期から見られる(腋窩に見られるものをaxillary
frecking))。メラノサイトの異常増生によるもの。
- 若年性黄色肉芽腫;5歳頃までに消退。
- 胸部に貧血母斑
- 本邦の患者さんは約4万人と推定されており、約3000出生に1人の割合で生じ、人種による頻度差はない。常染色体優性の形式で遺伝するが、突然変異による発症例が多く、患者さんの半数以上は孤発例である。