02-02;肝胆膵脾
肝臓
肝血管腫
- 頻度は3%前後
- 造影CTではfill-in pattern。単純MRIではT2WIでvery high intensity
A型肝炎
- AST/ALTが上昇している時には、通常はIgM-HA抗体が上昇している。陽性は3〜6ヵ月持続する。
B型肝炎
- 成人で感染した場合は約90%が一過性の感染であり、残りの約10%が慢性肝炎に移行する。
- 日本のHBVキャリアはgenotypeB,Cが大半を占め、genotypeAは本来極めて稀であった。しかし近年、欧米やフィリピンに多いとされるgenotypeAによる急性肝炎が多くなり、最近ではB型急性肝炎の約50%を占める。
- genotypeA型による感染の約10〜30%が慢性肝炎に移行する。
診断
- 急性肝炎ではAST/ALTが上昇している時期はHBs抗原が陽性となるため、HBs抗原で診断ができるが、劇症肝炎ではHBs抗原が陽転化せず、IgM-HBc抗体の検査が必要となる場合がある。
- B型急性肝炎を診断した場合にはHIVも同経路にて感染するため、検査が勧められる。
慢性肝炎
- 母子感染防止事業;1985年6月に開始時はHBe抗原陽性である場合に。1995年3月改訂以来はHBe抗原陰性のHBVキャリア妊婦にも拡大された。
- 慢性肝炎や既感染を疑う際は、HBs抗原とHBc抗体を測定することが勧められる。献血時のスクリーニングも2012年8月よりHBc抗体を追加することになった。
- HBs抗原、HBc抗体に加え、HBs抗体も積極的に測定することが検討すべきである。
治療
針刺し事故
- B型肝炎ウイルスは室温にて環境表面の乾燥血液の中で少なくとも1週間は生き続ける。
- HBsAg(+) HBeAg(+)では肝炎発症確率は22〜31%。感染エビデンスは37〜62%。
- HBsAg(+) HBeAg(-)では肝炎発症確率は1〜6%、感染エビデンスは23〜37%。
- HBIGを24時間以内と1ヶ月後に投与。ワクチンは曝露直後と1,6ヶ月後に投与。
免疫抑制剤を使用する時のチェックポイント
- HBc抗体またはHBs抗体が陽性であった場合は既感染パターンと判断され、HBV-DNA量を測定し、2.1log copies/mL以上であれば核酸アナログ製剤の投与、それ未満であれば1〜3ヶ月に1回HBV-DNA量とASL/ALTを測定し経過を観察する。
- 医療従事者のようにワクチンを接種している場合にはHBs抗原陰性、HBc抗体陰性、HBs抗体陽性のパターンになる。(ワクチン接種歴が明らかである場合は定期フォローアップから除外してよいとされる)
C型肝炎
- 夫婦間感染率は4〜5%と低い。
- 一旦感染した場合の慢性感染率は、70%から報告によっては80%以上と非常に高率である。
診断
- 急性期は感染後3カ月ほどはHCV抗体は検出されない(window period)。急性期の診断にはHCV-RNAを測定する必要がある。
- 慢性肝炎ではHCV抗体で診断。
針刺し事故
- 月1回、ALT、時にHCVRNA検査を加えて6〜12ヶ月間の追跡を行う。
E型肝炎
- IgA-HEV抗体で診断。発症後2〜5ヶ月陽性が持続する。特異度は99.9%と高いものの、他の急性肝炎でまれに偽陽性を示す。
脂肪肝
- 検診受診者の20〜25%は脂肪肝を伴う。脂肪肝は男性に多く、女性は45歳以上で徐々に増加する。
- 糖尿病では約半数に脂肪肝
NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)
- NAFLDは単純性脂肪肝と脂肪肝炎に分類され、肝組織で壊死、炎症、線維化を伴う進行性脂肪肝炎をNASH(非アルコール性脂肪肝炎)としている。
- NASHはNAFLDの約10%を占める重症型である。
NASH
- 肥満、高脂血症、高血圧の合併率は70%以上。糖尿病合併率は50%前後
- 確定診断は病理組織学的になされるが、肝細胞風船様変性(balooning)はNASH診断の最重要所見で、初期のNASHではbalooningのみで線維化はない。(線維化所見も重要病理所見)
- balooningを反映する検査はCK-18 線維化はIV型コラーゲン7s(ヒアルロン酸と組み合わせ検査)
- NAFLに比べNASHではHOMA-IRが高く、AST/ALT比もやや高い傾向になる(鑑別できる程ではない)
- VitEはNASHに有効
肝がん
- 約60%がC型肝炎ウイルス陽性、約15%がB型肝炎ウイルス陽性
体質性黄疸
ジルベール症候群
原発性胆汁性胆管炎
- 骨粗鬆症;高頻度;胆汁酸の分泌低下による脂溶性ビタミンの吸収障害と本症自体が閉経後の女性に多いこと。
- シェーグレン症候群11.9%。橋本病6.5%。リウマチ性関節炎3.6%。Raynaud現象3.1%。強皮症2.7%。潰瘍性大腸炎0.3%合併。
胆のう
胆石
無症状胆石
- 有症状化率は年率2〜4%。その危険因子は若年者、複数胆石、胆のう造影陰性。
- 治療介入が望ましい症状;胆のう壁肥厚、巨大胆石(3cm以上)、胆のう造影陰性
手術適応
- 結石多数例、大結石症例(3cm以上)、胆のう造影陰性例、胆のう壁肥厚例など超音波で胆のうの評価が十分できない例など
- 糖尿病合併例;急性胆のう炎の頻度が高い。手術後の合併症発生頻度が高い。
- 胆管拡張を伴わない膵・胆管合流異常を認める症例では胆のう癌の発生頻度が高い。(胆管拡張を伴う膵・胆管合流異常の症例では胆管癌の発生頻度が高く膵液と胆汁の相互逆流を遮断する分流手術が必要となる)
胆石溶解
- ウルソによる胆石経口溶解療法の適応はX線陰性のコレステロール胆石で、CT値60HU未満、直径15mm未満の症例が適応。経静脈性胆道造影で確認される(正常な胆のう機能を有する)浮遊結石が最適とされています。しかし治療効果には限界があり、石灰化が明らかな胆石や色素胆石、胆のう機能が廃絶している場合には溶解効果は期待できないとされています。
- 溶解療法では再発が問題となり溶解後で12年間の累積再発率は61%とされています。しかし50歳以下ではウルソ継続投与で16%に抑制できるという報告もあります。
ESWL
- X線陰性でCT値50HU未満で純コレステロール結石(USで)に有効。手術の高リスク例や高齢者には重要な選択肢になる。
- 結石消失後の再発率は高く10年再発率は54〜60%と推定される。
急性胆のう炎
手術
- 重症である場合は全身状態が改善後手術。しかし基本コンセプトは「すみやかに手術(発症72時間以内)」。
- 胆石による急性胆のう炎では内科的治療のみで改善した場合でも、2年で約7割の再発率を認めるため胆のう摘出術を勧めるべきである。
膵臓
急性膵炎
- アルコールとの関係;エタノール換算で50〜80g/日以上、飲酒期間としては5〜15年が多い。(飲酒期間が5年未満であれば、アルコール以外の急性膵炎を疑うべきである)
- 高TG血症による急性膵炎は膵炎の原因全体の1〜4%とされ、それほど多くない。
膵臓癌
- 手術は20%の症例にしか適応にならない。手術ができた症例でも2年生存は10〜20%。
発症危険因子
- 喫煙;ハザード比は1.3〜3.9。喫煙本数が40本/日以上の男性では3.3倍。
- 糖尿病による膵がんリスクは約2倍
- 膵臓癌患者の3〜9%に膵がんの家族歴を認める。