02-07-2;貧血
赤血球
- リボソームがなくタンパク合成は行われない(脂質合成もない)。ミトコンドリアがない(TCAサイクルも働かない)。成熟赤血球の主なエネルギー源は細胞質に存在する解糖系である。
- Htが30%以下であるとチアノーゼは出現しない。
網状赤血球
- Retiは通常0.5~2.0%, 5~19万/uLが正常
EPO
- 正常は8〜30mIU/ml。貧血が強い時(例えばHb7.0g/dl)、正常であればおかしい(100mIU/mLぐらいが予想される)
鉄
代謝
ヘプシジン
- 生体内鉄代謝を調節
- 過剰のヘプシジンはその受容体であるフェロポルチンを介して消化管からの鉄吸収を阻害するとともに、血中および組織中の鉄を組織マクロファージに収容することで鉄回転を休止。
- ヘプシジンは肝から恒常的に産生分泌され、炎症に呼応してIL-6依存性に分泌の亢進が起こることで慢性貧血の原因となる。
- 他の原因による貧血・低酸素症では、ヘプシジンの分泌抑制が起こるので鉄回転が亢進し赤血球造血が促進される。
- 過剰鉄はFenton反応などを介して活性酸素種(水酸基ラジカルなど)を産生し、細胞や組織を障害する。
鉄欠乏性貧血
- 若い女性の30〜50%は潜在的鉄欠乏状態であるといわれる。
- 鉄は主として十二指腸から二価鉄で吸収される。ビタミンC(アスコルビン酸)を同時に摂取すると、三価鉄が還元されて二価鉄に変換されるため、鉄の吸収が良くなる。しかし消化器症状の頻度も高くなるのであまり勧められない。
治療
- クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア);吸収促進効果があるといわれるクエン酸と錯体を形成させることにより吸収性の向上をはかった製剤(アスコルビン酸不要)
鉄の吸収
- Fe2+で溶存できる(=鉄蛋白にとりこまれる;十二指腸から小腸上部)。Fe3+ではイオンとして溶存できず不溶性の水酸化物になる。胃の中では強酸下でFe3+の状態で溶け出し、それが食物中のアスコルビン酸(ビタミンC)によってFe2+に還元される。(胃酸はFe3+にもFe2+にも関与しない)
食事の鉄
- 非ヘム鉄(穀物、野菜、卵、乳製品)の吸収率は1~5%。ヘム鉄(ヘモグロビン鉄、ミオグロビン鉄で肉類、魚介類に多い)の吸収率は25~35%。
- 正常成人は3〜4gの鉄を体内に持つ(ヘモグロビン鉄が最大)。吸収および排泄される鉄は1日薬1mgである。
- 決せ値フェリチン1ng/mlは貯蔵鉄8~10mgに相当する。(瀉血では1mLの血液で0.5mgの鉄が除かれる
不安定Hb症
- 溶血発作の誘因となる感染症には適切な対応。酸化性薬剤の使用回避
- Hb異常の病態は、グロビン遺伝子の変異による特定サブユニットのアミノ酸配列異常(異常Hb症)または合成量減少(サラセミア)である。異常Hb症は無症候性が約80%。
再生不良性貧血
疫学一般
- 好中球が500/ul未満の重症例は半年以内に約50%が死亡する
治療
- 免疫抑制療法によって90%近くの患者が長期生存を果たすようになっている。
- しかし免疫抑制療法によって寛解が得られたとしても、5〜10%の患者がMDSや白血病などのクローン性疾患に行こうすることが問題である。また寛解例の20〜30%に再発が見られる。
- 40歳以下でHLA一致同胞ドナーがいれば骨髄移植、それ以上の高齢者であれば免疫抑制療法が第一選択の治療として推奨されている。
溶血性貧血
- クームズテスト陽性;温式自己免疫性貧血、寒冷凝集素症、発作性寒冷血色素尿症
- クームズテスト陰性;遺伝性球状赤血球症、微小血管病性溶血性貧血、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症
- Evans症候群;ITP合併。SLEへ移行する症例が多い。
- 一般に血管外溶血が主体であれば、間接ビリルビンの上昇が顕著で、LDHの高値は軽度となる傾向があり、通常脾腫を伴う。一方血管内溶血が主体であれば、血清LDHの高値が顕著となる傾向があり、加えてヘモグロビン尿が認められる。非溶血時であっても尿沈渣の鉄染色でヘモジデリン顆粒が確認できる。
AIHA
- 1割程度においてCoombs試験で陽性にならない程度のIgGが溶血を引き起こしている場合がある。高感度法による結合IgG定量検査が診断に有用である。(クームス陰性AIHA)
温式AIHA
- 赤血球膜上のRhポリペプチドとバンド3蛋白が主要な赤血球自己抗原であることが判明している。
寒冷凝集素症
- 症状;寒冷にさらされると指、耳、鼻などの末端部が時に疼痛を伴って紫色ないし黒色に変化し、時に壊疽に至る。
- 自己抗体はIgMクラスに属し補体結合性がある。
- 続発性の基礎疾患としては、マイコプラズマ肺炎、サイトメガロウイルス感染、伝染性単核症など。
- 自己抗体における認識抗原の多くはIi式血液型物質である。Ii抗原はABO(H)式血液型抗原の合成前駆体である。
- 低力価寒冷凝集素症;1977年に報告
- 治療;保温が基本。副腎皮質ステロイドの効果は温式AIHAに比べると悪い。
発作性寒冷血色素尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria;PCH)
- Donath-Landsteiner試験(IgG抗体)
- 本症は梅毒に伴うことが多い。
- 自己免疫性溶血性疾患の2〜5%を占める比較的稀な疾患で、二相性溶血素であるD−L抗体によって引き起こされる。梅毒感染後のPCHでは、赤血球糖鎖抗原であるP抗原を認識している場合が多い。一方、非梅毒性のPCHではD-L抗体がI抗原を認識している症例も報告されている。
治療
摘脾
- 治療の第一選択はステロイドであるが、溶血が起こる場所である脾臓摘出は有効である(ただし冷式抗体や寒冷凝集素症では有効ではない)
二次性貧血
- 二次性貧血では炎症性サイトカインの一つであるIL-6が増加し、肝臓におけるヘプシジンの産生・分泌を促す。ヘプシジンは十二指腸粘膜における鉄吸収を抑制するとともに、網内系細胞内の貯蔵鉄の放出をも抑制する。これにより骨髄造血における鉄の供給を止めることになり(網内系ブロック)、その結果として貧血をきたす。
銅欠乏性貧血
- 栄養を長期間TPNや経管栄養に依存した時。銅とセルロプラスミンが低値になる。
PNH
症状
- 3大症状;ヘモグロビン尿、血栓症、骨髄不全
- 溶血により血中に放出された大量の遊離ヘモグロビンは、急激にNOと結合することでNO不足を惹起し、血管や消化管の平滑筋攣縮を引き起こす。(腹痛や嚥下困難)
診断