02-09-6;肺腫瘍
肺がん
喫煙
- American Lung Association によると5年禁煙で肺がんになる確率は半減し、10年で非喫煙者と一緒になる。
- 40年にわたり毎日1箱のタバコを喫煙した人の生涯肺がんリスクは、非喫煙者の20倍である。
- 60歳、50歳、40歳、30歳まで喫煙して止めた人の生涯肺がん発生率は、それぞれ10%、6%、3%、2%で、非喫煙者の1%未満よりかなり高い。
- 生涯の喫煙者は寿命が10年短いといわれ、60歳、50歳、40歳、30歳までに禁煙できた場合は7年、4年、1年、0年の寿命短縮で済む。
予後
検診
- 肺がん死亡率が低下すると証明されているのは高リスク患者における低線量肺CTのみである。
- 胸部X線写真では、データ上は肺がん死亡者数を減らすことができないとされている。
- NLST(NEJM 2011,365 395-409)で、胸部CTを、55〜74歳の喫煙者、もしくは禁煙から15年を経過していない人で、生涯喫煙量が1日1箱30年相当を対象に、胸部X線検査と比較;リスクは20%低下;5人に1人はCTで救命できた(毎年検査しても肺がんで死亡する5人のうち4人は助からない=この5人は肺がんで助かる人を除いている);喫煙を減らす、大気汚染対策をするなどの一次予防が大切であることがわかる。
アスベスト
- 体内に入ると30年以上の潜伏期の後、悪性中皮腫を発生させる。
- 蛇紋石から白石綿が、角閃石計からは青や茶色の着色石綿が得られる。化学的にはケイ酸マグネシウム(着色石綿は鉄を含む)。(ガラスやシリカゲルは無水ケイ酸)。抜群の耐熱性、抗腐食性、電気絶縁性、毛髪の数千分の一以下で極細かつ中空の線維構造は保湿性にも富む。石綿タイルや防火防音用建材として世界中で大量に消費。自動車のブレーキ板、魚焼き網(中央の白色部)、酒類のろ過材として用いられた。
- ケイ酸を含む埃は、肺の白血球を障害し、線維化を起こして小結節を作る。これを珪肺症と呼び、進行は緩慢だが肺結核にかかりやすく、肺がんも発症しやすくなる。
- 石綿肺は石綿繊維の吸入により両肺に線維化がはじまり、徐々に呼吸困難。青石綿の吸入は特に高い発がん性を示し、短期間少量でも30〜40年後に中皮腫を発生させることがある。(平均18カ月で死亡)。
- 血清オステオポンチン濃度は、癌のないアスベスト曝露者と胸膜中皮腫のあるアスベスト曝露者を鑑別するために用いることができる(NEJM 2005,353,1564-73)。
- 悪性中皮腫診断補助にSMRP(血清可溶性メソテリン関連ペプチド)は平成26年8月から保険適用。
腺癌
- 男性の肺がんの40%、女性の肺がんの70%を占める。組織特異性の高い腫瘍マーカーはSLX。
小細胞癌
- 1次治療で化学療法後の予防的全脳照射(PCI)は行わないように勧められると2014年より記載。
治療
ゲフィチニブ(イレッサ)
- 上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(Epidermal Growth Factor Receptor-Tyrosine Kinase Inhibitor;EGFR-TKI)
- EFFR遺伝子変異を有する非小細胞肺がんに対して、その70〜80%で腫瘍縮小効果を示す。
- K-ras変異があるとEGFR-TKIの効果は期待できない