10-3;婦人科腫瘍
子宮内膜症
- CA125やCA19-9が軽度上昇する場合が多い。
- 妊娠出産経験のない30歳代半ばの女性がなりやすい。
- 月経期の過激な運動が誘因になるという説もある。
子宮内膜症性のう胞
- 卵巣の子宮内膜症によるのう胞で、類腫瘍性病変である。典型的にあh、子宮内膜腺上皮と、上皮下に子宮内膜間質を認める。直径15cmほどののう胞を形成することもある。内容はチョコレート様であるが、褐色水様の場合もある。類内膜腺がんや、明細胞腺がんなどの悪性腫瘍を伴うことがあるので、のう胞壁に認められる結節状の肥厚部に対しては慎重な組織検査が必要である。
- 1%ぐらいの確率で癌化しうる。
卵巣がん
- 閉経期〜閉経後に発症し、自覚症状の乏しさから約6割はIII期ないしIV期の進行がんで発見される。年間の患者数は約8000人である。80%が上皮性。卵管や子宮に浸潤するだけでなく落下した細胞が腹水やリンパ液に混入し腹膜へ、さらには骨盤内や大動脈の周辺に播種性に拡大。
- 罹患者の約半数が亡くなり、死亡率が高いといえる。
- タキサン製剤(パクリタキセル)とプラチナ製剤(カルボプラチン)の併用療法がスタンダードだが、5年生存率はI期80%、II期60%、III期30%、IV期10%と厳しい。
- リスクは「妊娠・出産経験がない」「40歳代以降」「卵巣癌、乳がんに罹患した家族、親戚がいる」。遺伝歴については1割程度が関わっているといわれる。
- 経口避妊薬を10年以上使用した人では、卵巣がん発生のリスクが半減されるというデータも出てきている。
明細胞癌
- 子宮内膜症性のう胞に続発。
- グリコーゲンに富んで細胞膜が明瞭な淡明細胞、あるいはhobnail型再オブが、充実性〜管状〜乳頭状構造をなすか、もしくはそれなの混在からなる。悪性度が高い。
子宮筋腫
- 30歳以上の20〜30%以上に認められる。顕微鏡的なものまで含めると75%以上。(30代以上の女性の4〜5人に1人、40代以上の3人に1人が持っている)
子宮肉腫との鑑別
- 子宮肉腫の発症率は、子宮に腫瘤を有する患者の約1%程度と稀である。一方で悪性度が高く鑑別がつきにくい特徴がある。
- PET検査でFDGもFESも集積があると子宮筋腫。FDGが集積してもFESが集積がない場合は肉腫。(FES;フルオロエストラジオール)
子宮頸癌
HPV
- HPVは100種類以上がるが、約40種類が性器に感染する粘液型でその中の16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68型の13種類が高リスク型といわれ、子宮頸がんの原因となるHPVである。
- 子宮頸がんの組織型別に検討するとアジア人においては扁平上皮癌は16型が多いが、腺癌、腺扁平上皮がんは18型が圧倒的に多い。日本人の子宮頸がんにおける腺癌の割合は年々増加し、2008年度では22.8%を占めている。子宮頸部腺癌は発見が難しく予後も不良であることを考えると、HPV18型の予防が一段と重要である。
- がんへの進行;感染後通常2〜3ヶ月で体内から消失(9割)。10%が持続感染。そのうち高度異形成になるのはさらに10%(最初の1%)。さらに10%(最初の0.1%)が子宮頸がんを発症(1000人の感染者に1人)
検診
- 21〜29歳まではPAP(Papanicolaou)スメアなどの細胞診を3年に1回ずつ、30〜65歳までの場合はHPVウイルス検査も同時に施行すれば、5年に1回でもよいというオプションがある。65歳以上では子宮頸がんが新たに発生するリスクは低いので、それまで子宮頸がん検診を受けていて正常であった65歳以上の女性には子宮頸がん検診は推奨されない。