10-4;妊娠生理管理
受精
- 受精は卵管膨大部で通常行われる。
- 排卵時に第一成熟分裂(減数分裂)が起こり、卵管内に排出される。受精直前の卵子には第一極体が一つあるのみで、第二極体が二つ完成されるのは受精直後である。
- 細胞分裂は受精後27〜43時間後に開始され、3〜4日後に桑実胚になる。受精ランが子宮壁に接着し、着床は排卵後7〜8日後(胞胚期)に開始され、胚が完全に分泌期中期の子宮内膜に埋没するまで4日間要する。
- 妊娠11週(第3月)までと28週(第8月)以降はからだの変調しやすい時期で注意。
- 胎動を感じるのは16週から(第5月)
妊娠の生理
出産予定日
- 最終月経の第1日の月数に+9、または-3。最終月経の初日の数に+7。
健康診査
- 毎月1回(妊娠28週(第8月)以降には2回以上、妊娠36週(第10月)以降は毎週1回)
妊娠中の栄養
- 牛乳は妊娠前半期(妊娠19週(第5月)まで)は200〜300mL/日、妊娠後半期(妊娠20週(第6月)以降)は400mL/日程度とることが望ましい。
妊娠週数と胎児
- 頭殿長3cmであれば、妊娠週数は7をたして、10週と概算できる。
6週
sensitive period(受精19日から37日;およそ妊娠2カ月に相当)
22週
- 推定体重500グラム
- この週数の早産児でも救命されることがある。(以前は妊娠30〜32週でも呼吸障害が問題で亡くなった)
予定日近く
臓器
心拍
- 妊娠中期に最も心拍数が多く約180/分ぐらい。後期には110〜160/分となる。
肺
- II型肺胞上皮細胞は妊娠30週ぐらいから分泌量が徐々に増え始め、32週目以降さらに分泌量が増す。
甲状腺
- 妊娠初期の甲状腺機能亢進症の鑑別疾患にはバセドウ病とhCGによる一過性甲状腺機能亢進症がある。バセドウ病は妊婦1000人に約1人の頻度といわれ、一過性甲状腺機能亢進症は日本人では約3%といわれる。両者の鑑別にはTRAbを用いる。TSAbはhCGによる異化性甲状腺機能亢進症でも弱陽性になることがある。
造血
つわり
- 朝の空腹時に多いので、手軽につまめる食品(クッキー、せんべい、ゼリー状の食品)で、好みのものを常備する。
- 調理過程でにおいで気持ち悪くなることがあるので、調理済みの市販品、においの気にならない冷たい物を用意する。
- 1回の食事量を減らし、頻回に摂取する。
高年齢妊娠
- 35歳でダウン症候群の頻度は1/295
- 不妊症、不育症(流産)は平均それぞれ15%であるが、40代女性では64%、51%の高率となる。
- 日本で生まれている子供の50人に1人は体外受精。体外受精による妊娠率は20〜30%であり、40代女性では10%未満である。
- 2010年の合計特殊出生率(生涯に産む子供の数)は1.39。1975年は1.91であった。第一子出産の平均年齢はそれぞれ29.9歳と25.7歳である。
不妊症 体外受精
- 2010年の体外受精児の総数は28495人。同年の全国出生児が1071000人で体外受精児は2.7%。
- 不妊の原因は男性40%、女性40%、双方が30%。
- 全不妊夫婦の割合は10〜15%。
- 体外受精妊娠の流産率は25%で、この数字は正常妊娠夫婦の流産率と大差ない。
- おおまかに体外受精による妊娠率は、女性の20歳代で30%前後、30〜35歳で20%前後、35〜40歳で10%程度、40歳を超えると5%前後である。妊娠しても流産も多い。
薬物
- 受精後18日目ぐらいまでは、胎児への影響を考慮する必要はない。
NSAIDs
- 妊娠後半期に投与すれば、胎児動脈管の収縮や羊水量の減少(胎児の尿量が減少)など重大な問題を引き起こす。
ステロイド
- 分子量は360と小さいが、プレドニゾロンは胎盤で代謝されやすい。活性物質の胎児移行は10%程度。
プロスタグランジン;胃薬(例えばサイトテック)
キノロン系
- 動物実験レベルで使用は控えられているが、人では奇形の報告はなく、いくつかの臨床研究においても催奇形性作用は認められておらず、妊娠に気付かずキノロン系抗菌薬を服用しても妊娠中絶の適応とはならない。
サプリメント
葉酸
- 脊髄神経を収納する神経管は妊娠6週ごろに閉鎖するが、この進化過程が障害されると神経管閉鎖障害(NTD;neural tube defects)が発症する。二分脊椎以外の無脳症、脳瘤などは流産するか出生直後に死亡する。
- 厚生労働省は2000年に、妊娠を計画する女性は1日400μgの葉酸サプリメントを内服するように推奨した。
- 摂取しすぎると、じんましんのリスクが増えたり、新生児に喘息のリスク?との報告もあります。
- 総合ビタミン剤で摂取しようとするとビタミンA(奇形への影響)を取りすぎる可能性があります。
- ブロッコリーやほうれん草をしっかりと。シリアルにも含まれる。
- 妊娠1か月前から3ヶ月までを注意。
法律
産前・産後の休暇
- 労働基準法では、産前・産後の休暇はそれぞれ産前6週間(多胎妊娠では14週間)、産後8週間(医師の診断書があれば6週間)と規定されている。