12-02;放射線被ばく
- 平常時には誰でも年間平均1.5mSvの宇宙線や土壌、体内に存在する自然放射線を浴びている。
- 我々は常に電離放射線(宇宙線)、紫外線、酸素ラジカルによるDNA傷害にさらされている。紫外線はオゾン層によって、宇宙線は地球の磁場とバンアレン帯によって軽減されている。
- 日常生活の中の放射線被ばく量は、世界平均1人あたり年間2.4mSvに達し、飛行機で東京ーニューヨーク間を往復すると0.19mSv、胸部CTスキャン1回あたり平均7mSv、胸部単純X線1回あたり0.06mSvになる。(日本での自然放射線による平均被曝量は2.1mSvで世界平均より少ない)
- 体内には体重60kgで約7000〜8000Bqの放射性物質があることが知られており、例えば放射性カリウム40は、1kgあたり米で約30Bq、ドライミルクで約200Bq、お茶で約600Bq、干しシイタケで約700Bqが含まれている。(日本人は平均して年間0.17mSvをカリウム40から内部被曝している)。
- インドのケララ地方(放射性トリウムを含むモナザイトという砂礫から)やブラジルのガラバリ地方では大地からの被曝だけで年間4mSv,5.5mSvに達する。年間2〜3mSvの違いは自然放射線量のばらつきの中に収まるレベルである。
- 自然界から平均で、日本は年間1.5mSv。世界では年間2.4mSv
- 冠動脈CT:;約10mSv、肺高分解能CT;数mSv。胸部Xp;0.14mSv
- 日本では全医療被曝の60%以上がCTによる被曝
- 放射線作業従事者の年間被曝限度は、単年度50mSv、5年で100mSv、平均すると20mSv/年となる。
- 飛行機は25時間乗ると0.1~0.2mSv程度
基礎
- 吸収線量=Gy
- 等価線量=Sv
- 放射線のうち、X線やr線は係数が1なので1Gy=1Svだが、α線の場合、係数が20なので1Gy=20Svとなる。
妊娠中の被ばく
- 米国産婦人科学会は環境被ばく以外の被ばく量を1mSvに抑えるよう勧告しているが、安全値が確定できないがん化を考慮し、非常に少なめに設定されている。
- 受精後の被ばくは100mSvを閾値として、流産、奇形、小頭症、知能への影響などの頻度が増加する(確定的影響)。(確率的影響には小児がんと遺伝的影響がある)
- 被ばくの影響が最も大きいのは妊娠8〜15週であり、25週を過ぎると脳への影響は少ない。身体の発育への影響は250mSvを閾値としている。
- 国際原子力機関は子宮内被ばくによる15歳までの小児期がんの発想率は、0.006%/mSv増加するとしており、成人における試算0.005%/mSvと同程度と見られる。
- 妊婦の腹部CTでに被曝量は25mSv
放射線と生活習慣の発がんリスク
- 1000〜2000mSv(1.8)にあたるのは、喫煙者(1.6)、毎日3合以上飲酒(1.6)
- 500〜1000mSv(1.4)にあたるのは毎日2合以上飲酒(1.4)
- 200〜500mSv(1.19)にあたるのはBMI30以上の肥満(1.22)、BMI19未満のやせ(1.29)、運動不足(1.15〜1.19)、高塩分食品(1.11〜1.15)
- 100〜200mSv(1.08)にあたるのは野菜不足(1.06)、受動喫煙(非喫煙女性)(1.02〜1.03)
- 100mSv未満は検出不可能。(2)
- 0.5%癌が増えるとは3000人追跡し、1000人はがんが自然発症。そこへ5人増加するということ。
チェルノブイリ
- 汚染地域の被ばく線量は10年間で10〜30mSv、年間1〜3mSvである。被ばく原因は約50〜75%が飲食物の摂取による内部被ばく、25〜50%は地表上のセシウムからの外部被ばくとされている。
- 放射線ヨウ素131Iは、妊娠初期で流産、妊娠11週以降で甲状腺低下症、無形成、発育不全および中枢神経系の奇形、知能への影響を及ぼす。事故後131Iが小児の甲状腺がんを増加させることが明らかになった。特に0〜4歳時に被ばくした人に顕著で、現在まで25年間に約5000例が報告されている。
- WHOはチェルノブイリ原発事故後に明らかな奇形の増加はみとめられなかったと結論した。一方で神経管の異常、小頭症、小眼球症など奇形の報告も後を絶たない。
- チェルノブイリで骨髄移植した13名のうち11名は死亡、2名は移植からでは血球は自己回復。
原子爆弾
- 広島、長崎で20万人が亡くなり、約20万人が被爆者(広島14万人、長崎7.5万人)に。
- 広島ではウランが約600g。長崎ではプルトニウムが4kg分裂した。原子力発電所にはトン単位の核燃料がある。
- チェルノブイリ(1986)では700万テラが放出(原爆200発分)。500万人が被ばく。子供は100万人。福島では77万テラが放出(原爆20発分)。200万人が被ばく。子供は36万人。
- 被爆者でコホート調査10万人でも大変であった。
- 長崎では爆心地から2km以内ではMDS,AMLが発症。最初の10年までがピーク。200mSv以上かが発症。
放射性同位元素
半減期
- ヨウ素131;8日 ガリウム67;3.3日 テクネシウム99m;6日
- セシウム134;2年 ストロンチウム90;28.8年
参照
(1)Medical Tribune 2011.6.16,14
(2)国立がん研究センターホームページより