19-2;組織学

リンパ節

 結合組織性の被膜に囲まれ、被膜は深部に梁柱をのばしている。

 弁のある輸入リンパ管が被膜を貫通し、辺縁洞に入る。

 主要な血管は結合組織の梁柱にある。

 皮質は暗く染まり、髄質は明るく染まる。

 髄索には形質細胞、マクロファージ、リンパ球がみられる。

 髄洞は皮質からのリンパ球が流れ込む毛細管様の通路である。

 皮質の深部にはT細胞で充たされた傍皮質がある。

 おもな機能はリンパ液の濾過と異物の貪食である。

 B細胞を活性化して形質細胞やメモリーB細胞に分化させる。

 B細胞とT細胞は毛細血管後細静脈からリンパ節に入る。

 毛細血管後細静脈にはリンパ球ホーミング受容体と高内皮細胞がある。

リンパ小節

 皮質のリンパ球の集まりで、被膜をもたない。

 辺縁部は小リンパ球が集まるため濃く染まる。

 明るく染まる胚中心には中型リンパ球が見られる。

脾臓

 白脾髄は、中心動脈を囲む胚中心をもつリンパ小節からできている

 赤脾髄は脾索と脾洞からできている。

 皮質や髄質はないが、リンパ小節はある。

 白脾髄で血液中の高原に免疫反応が実行される。

 T細胞は中心動脈を囲んでおり、B細胞はおもにリンパ小節内に存在する。

 古い赤血球のヘモグロビンを破壊し、鉄を再利用する。

胸腺

 小葉構造のリンパ上皮器官で、皮質は暗染し、髄質は明染する。

 血液胸腺関門は成熟過程のリンパ球が血中の高原に接触しないようにしている。

 細網上皮細胞はリンパ球の成熟に必要なホルモンを分泌する。

 細網上皮細胞は髄質でハッサル小体を形成する。

鼻粘膜

 呼吸部

  ・粘膜上皮は杯細胞を含む多列線毛上皮。線毛の運動は後鼻孔に向かう。

  ・鼻腺;粘膜固有層にある混合腺。鼻腔を常に湿潤させる。

 嗅部

  ・鼻腔上部の限られた部位に存在。

  ・粘膜上皮は多列上皮(嗅上皮)。神経細胞である嗅細胞、支持細胞、基底細胞の3上皮から構成(光学顕微鏡で区別は困難だが、支持細胞の核は最上層、基底細胞の核は底部にある)(支持細胞にはリポフスチン顆粒;黄褐色色素;が多く黄色〜褐色に見える)。

  ・嗅覚;嗅線毛の受容体→嗅神経→嗅球→嗅索→嗅皮質のほか扁桃体などに投射

  ・嗅腺(ボウマン腺);嗅部の固有層にある。分泌物が嗅上皮を覆いその中に臭い物質が溶け、嗅線毛に捕捉される。

気管

  ・気管の上皮は多列線毛上皮で、杯細胞を含む。

  ・固有層に存在する気管腺は混合腺である。

  ・気管軟骨は硝子軟骨で、気管の背側はその軟骨を欠き、平滑筋層が発達している。

        (硝子軟骨は弾性を欠き、圧力に対して抵抗を示す)

気管支から肺胞

  ・細気管支 多列線毛上皮(杯細胞含む) 混合腺 平滑筋層あり

  ・終末細気管支 線毛細胞とクララ細胞 平滑筋あり

     (クララ細胞;表面活性物質を分泌すると考えられている)

  ・呼吸細気管支 単層立方上皮(線毛を欠く) 平滑筋はとぎれとぎれ

  肺胞

   呼吸細気管支とだけでなく肺胞どうしが肺胞孔という小孔で連絡。

  ・I型肺胞上皮細胞

   細胞質の厚さは0.2~0.5μm。血管内皮とそれぞれの基底板も融合しガス交換できる

   300nm程の厚さとなる。

  ・U型肺胞上皮細胞

   大型で明調。表面活性物質surfactantを分泌し、これにより肺胞は表面張力による

   収縮をまぬがれている。

  ・肺胞マクロファージ

   貪食作用により外気中のほこりや異物の処理を行う。

舌乳頭

 乳頭は4種に分類。

・糸状乳頭;舌全体に密に分布。上皮は角化する重層扁平上皮。味蕾はない。

・茸状乳頭;舌全体に散在性に分布。上皮は角化せず層構造は薄い。肉眼的に赤味を帯びる。少数の味蕾がある。

・葉状乳頭;舌後方の側縁のみ。乳頭の側壁に多くの味蕾を含む。

・有郭乳頭;分界溝の手前に存在。角化しない上皮層に多くの味蕾を持つ。

      乳頭直下の固有層または筋層に多くの粘液腺と漿液腺(エブナー腺)がある。

味覚を伝える線維は、

顔面神経(鼓索神経)(舌前2/3に分布する茸状乳頭の味蕾)

舌咽神経(舌後1/3の有郭乳頭、葉状乳頭の味蕾)

迷走神経(喉頭蓋周囲の味覚)

に含まれ、いずれも延髄の孤束核に終わる。孤束核からの線維は交叉し対側の視床の後内側腹側核を経由し、皮質の味覚野に至る。

食道

 粘膜上皮 重層扁平上皮で、ヒトで角化することはない。

 粘膜筋板 上皮に平行し走行する平滑筋束で、大部分は縦走する。

 食道腺

  固有食道腺;全域の粘膜下組織にあり、導管は粘膜筋板を貫いて上皮に開口。

  食道噴門腺;咽頭付近と噴門近くに存在。粘膜固有層にあり胃の噴門腺に似る。

 筋層

  内輪、外縦の2層からなる。

  上部1/3は全て骨格筋。中1/3は平滑筋と骨格筋が混在。下1/3は全て平滑筋。

  迷走神経支配だが、骨格筋は延髄の疑核から来る特殊内臓性運動神経、平滑筋は

  消化管の他部位と同じ迷走神経背側核からの副交感神経が支配する。

  アウエルバッハ神経叢

   2層の平滑筋の間に存在。食道を含む消化管の運動はここで節後線維に中継される。

唾液腺

  漿液細胞;好塩基性の細胞質。核は遠景で細胞の中心に存在。アミラーゼ等の酵素分泌

  粘液細胞;HE染色では細胞質はほとんど染まらず明るい。核は扁平で基底側に位置。

 耳下腺 漿液腺

  介在部は長く、線状部も長い。脂肪組織が混在する。

 顎下腺 混合腺(漿液腺が多い)

  介在部は短く、線状部は長い。

 舌下腺 混合腺(粘液腺が多い)

  介在部はなく線状部もほとんどみられない。

  介在部;導管のはじまり。扁平上皮によって作られる管。

  線条部;介在部と導管を結ぶ管。上皮細胞の基底部に基底線条がみられる。

      (ミトコンドリアによて作られる構造。好酸性を示す)

      小腸上皮や腎尿細管に同様構造あり、イオンや水の輸送が行われる。

      (線条部で重炭酸イオン、カリウムイオンが放出、ナトリウムイオンが再吸収)

  漿液半月;顎下腺や舌下腺の混合腺終末で漿液細胞が半月形に配列することがある

  筋上皮細胞;腺終末部から分泌物を絞り出す働き。唾液腺の終末によく見られるほか、

        汗腺や乳腺の終末部にも見られ、カゴ細胞basket cellとも呼ばれる。

唾液;デンプンを分解するαアミラーゼのほか、細菌の細胞壁を破壊するリゾチームが含まれる。


腎小体

 糸球体とボーマン嚢から成る。血液は輸入細動脈→糸球体→輸出細動脈の順に流れる。

 原尿は1日に180190リットル生成され、尿として排泄されるのは11.5リットル。

 腎小体から遠位尿細管までの単位をネフロンと呼ぶ。腎臓1個あたり約200万個。

(発生;ネフロンは造後腎中胚葉、集合管以下の尿管は尿管芽に由来する)

(ネフロンの位置で、皮質ネフロンと、傍髄質ネフロン;全体の1015%;に分かれる)

 

糸球体 毛細血管(有窓性)とメサンギウム細胞と足細胞で構成される

  ・毛細血管

   他の組織の有窓性内皮細胞と異なり横隔がない(濾過に適する)。

   基底板は足細胞と内皮細胞のそれぞれの基底板が合わさっている。

   内淡明層(ヘパラン硫酸等プロテオグリカンを多く含み、荷電の強い血漿分子の透過

   に対する障壁となっている)、緻密層(他の基底板と同様W型コラーゲンが主体)、

   外淡明層(足細胞に接する)から基底板がなることが電顕で観察される。

  ・メサンギウム細胞

   線維芽細胞のように膠原繊維を分泌して間質を作る。アザン染色では青に染まる。

   細胞質中に収縮蛋白を持ち、アンギオテンシンUは収縮させ、心房性ナトリウム利尿

   ペプチドは弛緩させる。

  ・足細胞

   多数の一次細胞質突起および無数の二次突起によりすべての毛細血管を覆っている

   と考えられている。突起の細胞膜には陰性荷電の強い糖タンパクが備わる。突起の

   間にはスリット膜あるいは横隔と呼ばれる薄い膜が張っている。

 ボウマン嚢

   糸球体を取り巻く足細胞となる臓側板と、尿細管上皮に移行する壁側板の2層の

   扁平上皮からなる。

近位尿細管

  ・光学顕微鏡では上皮の構造は均一に見え、円形の核を有し、強い好酸性を示す。

   基底部には基底線条(ミトコンドリアが多く存在)、管腔側には刷子縁brush borderが見られる。

  ・近位尿細管では、原尿からほぼすべての糖やアミノ酸が再吸収される。Na?Cl?

   再吸収は盛んで、原尿の65%の水と電解質がここで再吸収される。

ヘンレループ

  ・単層扁平上皮からなる。皮質ネフロンでは短く、傍髄質ネフロンでは長い。

遠位尿細管

  ・弱好酸性の明るい細胞質を持つ。ミトコンドリアが豊富であるが、基底線条は近位

   尿細管ほどはっきりしない。管腔側には刷子縁を欠く。

  ・副腎皮質から分泌されるアルドステロンは、遠位尿細管と集合管に作用して、Na?

   再吸収を促すとともにK?を排泄する。

集合管

  ・単層立方上皮 明調細胞と暗調細胞からなる。尿細管の他の部分と異なり、細胞境界

   が明瞭である。腎乳頭に近くなると暗調細胞がなくなり明調細胞が円柱状になる。

  ・明調細胞;細胞膜に水チャンネル分子であるアクアポリンを備える。管腔側の細胞膜

   にはアクアポリン2が、基底側の細胞膜にはアクアポリン3と4があり、抗利尿ホルモン(バゾプレッシン)の作用により水を再吸収し尿量を低下させる。

  ・暗調細胞;明調細胞より少数。H?を分泌する細胞とHCO??を分泌する細胞があると

   考えられている。ともにミトコンドリアに富む。

傍糸球体装置

 緻密斑に近接する輸入細動脈の一部では、中膜の平滑筋細胞が肥厚して傍糸球体細胞と

 呼ばれる大型の細胞の集団を作り、レニンを産生する(分泌顆粒を電顕で認める)

 ・緻密斑;遠位尿細管は、腎小体の血管極近くを通って集合管に移行する。輸入細動脈の

  近くで遠位尿細管の一部の上皮が円柱上皮様となり、核が密集した部分が見られる。

  これを緻密斑と呼ぶ。尿細管内皮を流れるNa?Cl?濃度を感知する。

 傍糸球体細胞とそれに付随する無顆粒性細胞、糸球体外に存在するメサンギウム細胞、

 緻密斑を合わせて傍糸球体装置と呼び、糸球体濾過量を調節する(例:糸球体濾過量が減ると、輸入細動脈の拡張と輸出細動脈の収縮が起きる)

尿管

 ・上皮は膀胱と同じ移行上皮。

 ・尿管の平滑筋は上2/3は内縦・外輪、下1/3は内縦・中輪・外縦の3層からなり、

  蠕動運動により尿を膀胱へ運ぶ。

移行上皮

 ・光学顕微鏡では重層上皮のように見えるが、電子顕微鏡ではすべての上皮細胞が突起を

  伸ばし基底板に接していることがわかる。最表層を覆う細胞は大型で多核である(表層

  細胞または被蓋細胞という)。尿管および膀胱の上皮である。

尿道

 ・前立腺部、隔膜部、海綿体部に区別される。上皮は膀胱に近い部分(前立腺部)のみ

  移行上皮、その後は短い多列円柱上皮の部位を経て、隔膜部と海綿体部で重曹円柱上皮

  となる。

 ・尿生殖隔膜を貫く部位に尿道括約筋がある。

 ・胃底腺は消化に必要なペプシンや酸を分泌。噴門腺や幽門腺は粘液を分泌する。

  (噴門腺は食道開口部付近、幽門腺は幽門から45cmの範囲に分布)

  (幽門腺はしばしば分枝する管状腺)

 ・胃粘膜の上皮細胞は、胃小窩の基部や、胃底腺頸部に存在する幹細胞が分裂供給。

 表層粘液細胞

  ・胃の内部や胃小窩の壁を構成する。円柱上皮細胞。

  ・核は基底部に存在し、明るい細胞質を持つ。粗面小胞体とゴルジ装置がよく発達。

   細胞頂部に粘液を含んだ粗大な顆粒を蓄える。この粘液は食物と混和されにくく、

   胃粘膜表層にシート状に広がり、酸やペプシンが上皮細胞層まで拡散するのを防ぐ。

  ・重炭酸塩を分泌し、粘液層のpHが中性付近に保たれる。

  ・表層粘液細胞は表層に向かって成熟し寿命は約5日。

 胃底腺

  腺底部に順次移動し、寿命は数ヵ月から1年。主細胞、壁細胞、副細胞で構成される。

  主細胞

   ・好塩基性細胞。腺頸部よりも底部により多い(腺底は主細胞のみ)。

   ・ゴルジ装置や粗面小胞体が発達し分泌顆粒を有する。

   ・ペプシノーゲンや胃リパーゼを分泌

    (ペプシノーゲンは、胃の内腔で、酸や既に存在するペプシンにより加水分解)

  壁細胞

   ・大型の好酸性細胞。腺中央部から腺頸部に分布。管腔側よりも基底側が拡がり、全体として角の丸い三角形をしている。

   ・管腔側には微絨毛があり、さらに細胞膜の一部が細胞質中に深く陥入して複雑な細胞内分泌細管を構成する(酸分泌が盛んであると、細管に微絨毛が密になる)

   ・細胞膜直下には小胞が多数みられ、小管小胞系と呼ばれる(酸分泌が盛んであると小管小胞系は少ない;分泌能の変化に対応し細胞膜の予備と考えられる)。

   ・H?-K? ATPaseの働きでH?を能動的に分泌する(H?は細胞内でH?OCO?から

    酵素的に合成される)。HCO??との交換輸送により血中からCl?が取り込まれ、H?輸送と共役して管腔側に放出される(HCl 塩酸として)。

   ・輸送過程に必要なATPはミトコンドリア(壁細胞の体積の半分近くを占める)により供給される。

   ・胃内因子 gastric intrinsic factorを分泌する(ビタミンB??の吸収に必要)

  副細胞(または頸部粘液細胞)

   ・主に腺頸部に分布する立方体の粘液細胞。管腔側に多数の粘液性分泌顆粒を持ち核は基底側に圧排されている。

 筋層

  ・最内層が斜走筋、中間層が輪走筋、外層が縦走筋。斜走筋は噴門から胃体部にかけて、

   縦走筋は特に小弯と大弯に沿って分布する。輪走筋は最も良く発達し、幽門に近づく

   に連れて厚みを増し幽門括約筋を作る。

  ・マイスナー神経叢は粘膜下組織に、アウエルバッハ神経叢は輪走筋縦走筋の間にある

小腸

  ・内壁に輪状ヒダと呼ばれる、上皮から粘膜下層まで含むヒダがある。これは十二指腸

   と空腸でよく発達し、表面を覆う絨毛とともに栄養吸収面積を拡げる(数百倍)。

  ・小腸全域で、粘膜固有層には腸腺、リンパ小胞、中心乳び管、毛細血管網が発達し

   間質には多くの白血球、リンパ球、形質細胞が見られる。

 腸腺(陰窩あるいはリーベルキューン腺)

  ・陰窩の上皮には、腸上皮の幹細胞、未分化な吸収上皮のほか、パネート細胞や少数の

   消化管ホルモン分泌細胞が含まれる。

  ・腺底部で細胞分裂は盛んで吸収上皮細胞あるいは杯細胞に分化し絨毛先端に向かい

   移動する。寿命は24日。

  ・パネート細胞は、管腔側の細胞質に強好酸性を示す粗大顆粒を含む細胞。

   陰窩の基底部に数個まとまって存在。顆粒中にリゾチームを含む。

 十二指腸腺(ブルンネル腺)

  ・十二指腸固有の粘液腺。固有層ばかりでなく粘膜下層にも存在。分泌はアルカリ性。

   胃酸を中和し、膵液中の消化酵素が働けるpH環境を作る。

 中心乳び管・毛細血管網

  ・中心乳び管central lactealはリンパ管で、脂質を運ぶ

  ・毛細血管網は血管は有窓性で、糖やアミノ酸が入り、門脈を経て肝臓に運ばれる。

 リンパ性組織

  ・固有層にリンパ浸潤が頻繁に認められ、固有層から粘膜下層にかけて孤立リンパ節が

   見られる。

  ・回腸にはパイエル板と呼ばれる集合リンパ小節があり、固有層から

   粘膜下層に位置する。

   (気道消化管などの粘膜に存在する集合リンパ節組織を粘膜関連リンパ組織MALT

    と呼び、局所免疫の中枢と考えられている。GALTBALTがある)

 小腸の吸収上皮細胞 散在性の杯細胞を含む単層円柱上皮。微絨毛を有する。

  微絨毛膜

   ・上皮細胞の表面に色素に濃染する細い帯が見える(刷子縁)。電顕で表面に密生する上皮細胞の突起(微絨毛)が観察される。

   ・微絨毛の表面に糖が付着する。これは多糖類の細線維からなる網目状の構造。糖衣は上皮細胞内のゴルジ装置で作られ、輸送小胞により微絨毛膜に供給される。膵液中の消化酵素は糖衣に吸着され、微絨毛膜の近傍で栄養素を消化し、微絨毛膜上の終末消化酵素群にその基質となるジペプチドや二糖類を供給する。

    (糖衣は、膵酵素による上皮細胞の障害を防ぐとも考えられる)

   ・微絨毛の内部にはアクチン線維が密に存在し、形態を維持する。細胞の頂部を横走

    するアクチン線維であるターミナルウェブに連結する。

   ・糖やアミノ酸の輸送担体の多くは、腸内外のNa?濃度勾配を駆動力とする。

   ・グルコースの輸送にはナトリウムとの共輸送体であるSGLTがある

  側基底膜

   ・隣接する細胞膜との間で、上部ではタイト結合、下部ではかみ合いを作りつなぐ。

   ・Na?-K?ATPase(Na?ポンプ)が多く存在し、Na?を細胞外へ汲み出す(そのため細胞内

    Na?能動は低く保たれ、微絨毛膜でのNa?と共役した能動輸送を可能にしている)。

   ・上皮細胞の底部に多くのミトコンドリアが集まりATPを供給している。

   ・グルコースは濃度勾配に従って受動的に輸送するGLUT2がある。

(フルクトースはGLUT5

   ・アミノ酸輸送体の多くもナトリウムやプロトンの濃度勾配に依存して輸送する。

  杯細胞

    細胞質には粘液を含む顆粒が豊富に含まれる。核は基底部に圧排され、細胞質には

    粗面小胞体とゴルジ装置が発達している。単一細胞からなる粘液腺で、消化管と

    気道にみられる。

大腸

   ・小腸のようなヒダや絨毛がないが、結腸ヒダ(半月ヒダ)と呼ばれるヒダがある。

    これは筋層を含めた管壁全体で作るヒダだり、小腸の輪状ヒダとは異なる。

   ・粘膜上皮は単層円柱上皮、吸収上皮細胞と杯細胞(陰窩の底部近くに多い)を含む。

   ・上皮細胞表面に線条縁がみられ、電顕観察される微絨毛は小腸に比べまばらで低い

   ・吸収上皮細胞の働きは、水と電解質の吸収である。小腸同様に側基底部の細胞膜に

    Na?-K?ATPaseが存在する。

   ・大腸の上皮細胞は陰窩の底部で増殖し、寿命は5日である。

   ・2層の筋層のうち縦走筋は、3カ所で帯状に肥厚し、3本の結腸ヒモ taenia coli

    作る。

   ・消化管の水吸収;食餌から2?、唾液1.5?、胃液2.5?、胆汁0.5?、膵液1.5?

    あわせて18?の水分が消化管に流入し、小腸以下における電解質の吸収に伴う

    二次的な水の吸収、および水チャンネルを介して回収され、小腸では約6.5?

結腸では1.3?の水が吸収される。

肝臓

 門脈域 グリソン鞘

 (小葉間結合組織)

  3つ以上の肝小葉の出会う部位でやや広い結合組織

  小葉間動脈(栄養動脈である固有肝動脈から) 

小葉間静脈(機能血管である門脈から)

小葉間胆管 の3者 portal triad(三つ組)と呼ぶ。

 類洞

  ・血液は小葉間動脈、小葉間静脈から類洞をゆっくり流れ、外側の肝細胞索の肝細胞と

   物質交換を行い、中心静脈に流れる

  ・類洞は洞様毛細血管であり、壁は有窓性内皮細胞で、基底板を欠く。

  ・ディッセ腔;内皮細胞と肝細胞の狭い空間。多少の弾性線維や膠原繊維が存在。

         伊東細胞(コラーゲン産生。ビタミンAを貯留)が存在

 小葉

  古典的門脈小葉;中心静脈を中心とした六角形

  門脈小葉;3つの中心静脈を結び、portal triadを中心とした三角形

  肝腺房;肝細胞の機能的概念

   門脈域に近いゾーン1;最初に門脈血を処理するため有害物質や薬剤に会う。

   酵素活性も多様性を持つ。

    糖新生酵素活性は中心静脈に近い部分では低く、周辺部が高い。

    解糖系のピルビン酸キナーゼは中心静脈周辺で高い。

 肝細胞

  ・多くは4倍体(体細胞は通常2倍体)。二核細胞もしばしば観察される。

  代謝(解毒)

   滑面小胞体;薬物代謝酵素やアルコールデヒドロゲナーゼが存在。

   ペルオキシソーム

   (いずれも誘導により増加する)

  合成

   アルブミン、各種グロブリン、フィブリノゲンなどの血漿タンパク質の合成

   類洞に近いゴルジ装置を経由して血中に分泌

  貯蔵

   グリコーゲン顆粒(PAS染色陽性)

  胆汁分泌

   胆汁酸は滑面小胞体で合成。

   毛細胆管;隣合う2つの肝細胞側面で、閉鎖堤で結ばれる管。

   肝小葉周辺部に向かって流れ、ヘリング管を経て、小葉間胆管に注ぐ。

 クッパー細胞

   類洞の壁に存在し食作用を持つ。

   門脈血中内の有害物質除去(エンドトキシン等)、免疫複合体の取り込み分解

   サイトカインの分泌等。

 ピット細胞

   類洞内に存在する大型リンパ球。Natural killer cell(免疫監視)と考えられている。

(ヘリング管の細胞は肝臓障害時に、肝細胞や小葉間胆管上皮に分化する)

胆嚢

  ・ヒダを持つ粘膜上皮、粘膜固有層、筋層、結合組織および漿膜からなる。

  ・粘膜筋板はない。

  ・上皮は背の高い単層円柱上皮。線条縁を有する(ミトコンドリアが豊富)。

  ・粘膜固有層には有窓性の毛細血管が多い。リンパ管は分布しない

  ・胆嚢上皮は水分を吸収して胆汁の濃縮を行う。

  ・筋層は副交感神経刺激あるいはコレシストキニンにより収縮。

 ロキタンスキー・アショフ洞

  粘膜の過形成の結果、ヒダが深く陥入し筋層に達する。

 ルシュカ管

  胎生期に近接する肝臓から胆管が陥入。肝臓の胆管と直接交通。

  手術時に損傷すると術後に胆汁漏出を来すことになる。

膵臓

  ・内分泌部は膵臓全体の1〜2%。尾部を中心に存在。

  ・外分泌部は、導管を伴う薄い疎性結合組織によって多くの小葉に分けられ、各小葉は

   さらに多くの腺房からなる。

 腺房細胞

  ・基底側が広く錐体形。核は円形で基底部に存在。細胞質は好塩基性(腺腔に面した

頂部は分泌顆粒が貯蔵され好酸性を示す)。電顕観察では粗面小胞体やゴルジ装置が

よく発達。

  ・アミラーゼ、トリプシン、キモトリプシン、リパーゼ、ヌクレアーゼ等の消化酵素を

   産生するが、別々の細胞でなく、単一の細胞が産生する。

  ・膵臓の消化酵素は不活性な前駆体として分泌され、膵液中のトリプシノーゲンは、

   小腸上皮の微絨毛膜にあるエンテロキナーゼにより活性型のトリプシンに変換され

   さらにトリプシンが他の酵素前駆体を加水分解し活性型に変える。

 導管系

  ・腺房中心細胞は、明調の細胞質を持ち、好塩基性で暗調の腺房細胞と区別しやすい。

   分泌機能はない。

  ・介在部、小葉内導管、小葉間導管を経て主膵管に至る。

   小葉内導管の上皮は明調の立方上皮細胞で、多量の重炭酸塩を含むアルカリ性液体

   を分泌する。

  分泌

   セクレチン(十二指腸から)、コレシストキニンにより分泌刺激。

   (GIPはインスリン分泌を刺激)

   膵液分泌は副交感神経刺激により促進。交感神経線維は膵臓の血流調節に関与。

 ランゲルハンス島

  A細胞(α細胞)

   ・好酸性顆粒を持ち、膵島細胞全体の1015%を占める。島の辺縁部に存在。

    グルカゴンを分泌(肝臓のグリコーゲンを分解促進し血糖値を上昇)

  B細胞(β細胞)

   ・最も数が多く膵島細胞全体の7080%を占める。島の中心部に分布。

    インスリンを分泌。好塩基性細胞

  D細胞(δ細胞)

   ・数は少なく、ソマトスタチン(A細胞、B細胞の機能を抑制)を分泌。

    銀好性で、鍍銀法により同定されてきた。

  ほかにPP細胞(膵ポリペプチドを産生)、DJ細胞(VIPを分泌)

     腸クロム親和性細胞など数種のホルモン産生細胞が知られている。


精路

 精子は精細管内で形成され、精巣網、精巣輸出管を通って精巣を出る。

 精巣上体内の精巣上体管で成熟し、精管を通る

曲精細管

 ・精巣小葉内に1〜4本存在する強く迂曲した細管ループ。

 ・精粗細胞とセルトリ細胞が基底板に接する。

 ・精子まで細胞は細胞質橋により互いに結ばれており、同調して精子形成過程を進む

 ・曲精細管周囲は多角形の線維筋細胞の層があり、この収縮によって精子や分泌物が

  送り出される

 精祖細胞

3段階を経て精母細胞になる

  ・Type A dark(Ad);卵円形の暗い核。幹細胞と考えられる

  ・Type A pale(Ap);明るい核を持ち、頻繁に体細胞分裂を繰り返す。

  ・Type B;球形の核を持ち、クロマチンは凝集し核膜に付着したように見える。

 精母細胞

  ・精母細胞になるとすぐにDNAの複製を行い4倍体(一次精母細胞)となる。

  ・基底板に近い層を離れると、細胞質は大きくなり、核は細糸状の染色質が見られ(

   減数分裂)、明調で精粗細胞より大型の細胞となる。

  ・減数分裂の第一分裂前期は2223日の長い時間がかかる。

  二次精母細胞(精娘細胞)(2n

  ・第一分裂後生じる。

  ・成長やDNA複製を行うことなく第二分裂に入り(短時間で終える)、精子細胞

   となる。

 精子細胞

  ・精母細胞は減数分裂の結果、4個の精子細胞を生ずる。

  ・最初は球形の細胞であるが、形態変化して精子となる。ゴルジ装置で形成された顆粒

   が融合して大きな尖体小胞となり、将来の精子先端部分となる。鞭毛の形成起点と

   なる中心体は、尖体小胞と反対側の細胞質に移動し、微小管による軸糸複合体の形成

   が始まる。

  ・成熟期の精子は、不要な細胞質を残余体として切り離す。この段階で細胞質橋による

   相互の連絡がなくなりセルトリ細胞から離れる。

 セルトリ細胞

  ・明るい大きな核と広い明調の細胞質を持つ。核は卵円形で、しばしば深い陥入あり

   明瞭な核小体を含む。

  ・発達途上の生殖細胞の支持細胞として働く。セルトリ細胞の基底側には精粗細胞と

   初期の一次精母細胞が、管腔側には一次精母細胞以降の発達段階の細胞が存在する。

   通過していく時にはセルトリ細胞間の閉鎖帯の解体と再構成が起きる。

  ・下垂体のFSH(卵胞刺激ホルモン)の作用を受け、インヒビン(下垂体に働いてFSH

   の分泌を抑制する)、アンドロゲン結合タンパク(精子の産生を促す)を分泌する。

  ・精子形成の過程で生じた精子細胞の残余体を貪食処理する。

  ・血液精巣関門;血漿成分の精細管への侵入を阻止。精細管内の輸送液体を分泌。

 ライディッヒ細胞

  ・間質にみられる大型の好酸性細胞。

  ・下垂体のLH(黄体形成ホルモン)の作用を受け、男性ホルモン(テストステロン)

   を分泌する。

  ・電顕では脂肪滴があり、滑面小胞体の発達が良い(ステロイド産生細胞の特徴)。

精子

  ・5μm程の頭部、頸部、中間部、主部、終末部からなる。

  ・尖体はゴルジ装置由来の小胞から作られるライソソーム様小器官で、PAS反応陽性

   の分子を含む。これは酸性フォスファターゼ、ヒアルロニダーゼ、トリプシン様の

   タンパク分解酵素であり、受精の際に精子が卵膜通過するのに必要な酵素群である

  ・尾部;精子の鞭毛にあたる部分。尾の中心には9+2型の軸糸axonemeが終末部まで

   伸び、中間部では9本の緻密線維、その外側をミトコンドリアが取り巻く。主部では

   ミトコンドリアはなく、7本の緻密線維と線維鞘が軸糸を取り囲み、終末部は軸糸

   だけとなる。

直精細管

  ・精巣小葉の先端部にある1mm程の短い精細管が直走する部分。精巣網に合流する。

  ・上皮は単層の低円柱状もしくは立方形の細胞。精路の起始部。

精巣輸出管

  ・精巣網から十数本の輸出管が生ずる。管の内腔は波状に見えるが、これは上皮細胞が

   背の高い線毛細胞と立方形の無線毛細胞からなっているためである。基底板の外側

   には輪状に配列する平滑筋があるが、発達は良くない。

精巣上体(管)

  ・全長6mに達する単一の管。著しく屈曲している。

  ・上皮は丈のそろった多列上皮で、上皮細胞は不動毛を持つのが特徴。

  ・上皮下には輪走する平滑筋層があるが、精管に近づくと、縦走筋層が内外に加わり

   厚さを増す。平滑筋の収縮は蠕動運動を起こし精子を輸送する。精巣から分泌された

   液体の90%を吸収し濃縮する。

  ・この段階での精子は運動能や受精能はない(射精後に起こると考えられている)。

精管

  ・精巣上体に続く精子の輸送路。径はおよそ5mm。長さは約30cm

  ・精巣動静脈、精巣挙筋とともに精索を作り、腹腔内に入ると前立腺に向かう。

   前立腺に入る直前に精管は膨大部をつくり、また精嚢と連絡する。

  ・上皮層、筋層、および外膜からなる。上皮は丈の低い多列上皮で不動毛を持つ。

   筋層は内縦・中輪・外縦で、精巣上体(管)よりもさらに発達している。

  ・蠕動運動による精子輸送と貯蔵の働きがある。

射精管

  ・精管に続く短い直線状の管で前立腺を貫く部分。上皮は多列または単層円柱上皮。

精嚢

  ・付属腺

  ・精管によく似た構造を有する(精管よりも内腔のヒダがよく発達)。

  ・上皮は多列円柱上皮

前立腺

  ・尿道起始部を取り囲む複合管状腺の集合。前立腺管を介して尿道に分泌される。

  ・分泌物が濃縮され石灰化し前立腺石となる(加齢により増加)。多列円柱上皮。

尿道球腺(カウパー腺)

  ・男性の尿道球後端の両側で、尿生殖隔膜内に対になって埋没するエンドウ豆大の

   分泌腺。導管は尿道に開口。粘り気のある弱アルカリ性の液を分泌し尿を中和洗浄

   精子の通過に備える役割。

erectionの機序

  ・陰茎海綿体に血液が充満して起こる。

  ・性衝動により、脊髄下部の勃起中枢を刺激し、仙髄下部勃起神経と上部の下腹神経叢

   が勃起反射を起こす。

・陰茎海綿体に出入りする動脈と静脈には特殊な構造がある。平常は動脈からの血液は

 バイパスにより静脈に逃げるが、勃起時はバイパスが閉じて海綿体が充血する。

弾性型動脈

 大型の動脈:上行大動脈 肺動脈 胸腹大動脈 腕頭動脈 鎖骨下動脈 総腸骨動脈

 心臓近くで受動的に高い血圧に耐える必要がある太い動脈(拡張期にも一定の血圧を維持するのに役立っている)。明瞭な内外弾性板の形成は認められない

筋型動脈

 太い動脈から枝分かれした太さの動脈。中膜の弾性線維がなく代わって平滑筋が発達。

 中膜の平滑筋の収縮により体型の大きさが変化し、能動的に血圧の調節を行う。

 筋型動脈の中膜最外層の平滑筋は神経支配を受けている。

 内弾性板(1枚)と外弾性板(数枚)

中膜

筋型動脈では平滑筋が、弾性型動脈では弾性板が発達している。

 小さい動脈と細動脈

  内皮と内弾性板、その周囲を輪状に囲む中膜平滑筋と薄い外膜からなる。

静脈

 内膜  内皮と内皮下の結合組織からなり、縦走する平滑筋線維が存在する場合が多い。

        大型の静脈(管径が1520μm以上)に認められる弁は、内膜が特殊に分化した

ものである。

 中膜 輪走する平滑筋層とその間の結合組織層からなる。動脈におけるような弾性板の発達はない(下半身の静脈は、上半身に比べ平滑筋がよく発達し管壁はやや厚い)。

 毛細血管後静脈

        血管の中で炎症時にもっとも反応しやすい部分(血管透過性の亢進、白血球遊出)

毛細血管

 内皮細胞、基底板、周皮細胞からなる。太さは赤血球が1個通れる程度。

 部位によって小孔の有無(隔膜を伴う場合と伴わない場合)、基底膜の有無、周皮細胞の

 有無などに違いがある。

 毛細血管ではその壁を通して、血液と組織の間のガス交換や物質交換が行われている。

  連続性毛細血管 内皮細胞は連続的な薄層をなし、血管壁に孔があいていない

  有窓性毛細血管 内分泌腺や腎臓に分布し内皮細胞に直径50nm程度の窓があく

  非連続性(洞様)毛細血管 肝臓や骨髄の毛細血管では管腔が広く、壁に大小の孔があく

動静脈吻合

 とくに手掌、足底、耳介、鼻、口唇などの皮膚(の真皮)に発達し、外界の温度変化に

 対する体温調節に役立っている。胃腸の粘膜、唾液腺、腎臓などにも血流調節のための

 動静脈吻合が存在する。また陰茎(陰茎海綿体)にも存在し勃起に重要な役割を果たす。

リンパ管

 毛細血管や細静脈からは、血液の液性成分が絶えず組織内に漏出している。この液性成分

 (組織液)の多くは再び血管系に吸収されるが、一部(約10%)はリンパ管系に入る。

 毛細リンパ管は、とくに自由表面をおおう上皮下でよく発達している。腸絨毛の毛細リン

 パ管は特に発達している(脂肪を収容運搬する経路として)。毛細リンパ管は、免疫系の

 細胞(リンパ球や樹状細胞)移動経路として働き、一方でコロイド粒子や異物粒子、細菌

 などを好んで吸収する。

 静脈に比べ、その内腔の広さに比し壁の相対的厚さはさらに薄く、平滑筋の発達も乏しい。

 弁の出現頻度は静脈よりも多い。

心臓

 心筋層

  筋層をつくる心筋線維は、らせん状に心臓を取り囲むように規則正しく走り、血液を

  しぼり出すのに都合が良い配列をしている。

 刺激伝導系の特殊心筋線維(細胞)の一般的特徴

1)筋原線維が少ない 

2)グリコゲンが豊富 

3)T細管がない

4)中間径フィラメントが豊富

ヒス束とプルキンエ線維はギャップ結合に富み、興奮をすばやく伝導することができる。

卵巣

  ・門(血管や神経が出入りする)、皮質、髄質からなる。

  ・最表層は胚上皮(かつて生殖と関わると考えられた名)と呼ばれる単層立方上皮。

   その下に緻密結合組織である白膜がある。皮質と髄質の境界は不明瞭で、皮質には

   様々な発達段階の卵胞がある。

  ・門にはhilus cellと呼ばれるステロイドホルモン産生能を持つ細胞がある(精巣の

   ライディッヒ細胞に相当する)。

 出生まで

  ・始原生殖細胞は、胚外の卵黄嚢の内胚葉由来であると考えられている。

  ・生殖細胞は胎生5週までに生殖隆起に移動し、卵祖細胞となり分裂し増殖する。

  ・胎生8週以降、一部の卵祖細胞は減数分裂に入り卵母細胞となる。

  ・卵細胞の数;出生時100200万個、出生後減少し思春期に約30万個

   (成人の卵巣には卵祖細胞は存在しない)

  ・卵細胞は出生時までに減数分裂の第一分裂の前期に入る。減数分裂が完了するのは

   排卵された後である。

 卵胞の成熟

   卵胞;卵細胞oocyteと卵胞細胞follicular cellからなる。90%以上の卵胞は生涯に

      発達期に入ることなく終わる。卵胞の成熟から排卵まで約85日(約3周期分)

  原始卵胞

   ・1層の扁平な卵胞細胞により卵細胞が取り囲まれている(卵胞細胞を人為的に取り

    除くと減数分裂が終了するので卵胞細胞がその進行を妨げていると考えられる)。

   ・原始卵胞は白膜直下の皮質内に多く認められる。

  一次卵胞

   ・卵胞細胞が立方形に変化し、増殖重層して顆粒膜細胞granulosa cellとなる。

これはFSH(卵胞刺激ホルモン)の働きによる。顆粒膜細胞層には血管がなく、

細胞間はギャップ結合によって密に結合され、機能的合胞体細胞となっている。

   ・莢膜細胞theca cellが間質細胞から分化し、顆粒膜細胞基底板の外側に位置する。

   ・卵細胞は糖タンパクを含む粘液様の物質を分泌し透明帯を回りに形成する。

これが卵と顆粒膜細胞を隔てる。

  二次卵胞

   ・卵胞腔を持つ卵胞。完成した大きさ(約100120μm)に達して成長を止める。

   ・顆粒膜細胞層が612層くらいに増殖し、卵胞液を分泌し卵胞腔を作る。

   ・卵細胞に接する顆粒膜細胞は卵細胞に対して放射状に配列;放線冠と呼ばれる。

    (放線冠の細部は突起を透明体内に伸ばし卵細胞とギャップ結合を作り、卵胞の

     減数分裂の進行を制御しているらしい)

   ・卵丘;卵細胞を囲む顆粒膜細胞が高まり形成。分裂能が高くホルモン産生能は低い

   ホルモン;内莢膜細胞はLHの受容体を持ち、その作用によりテストステロンやアンドロステンジオンを合成し細胞外へ放出(細胞内に脂肪滴あり)。

       ;顆粒膜細胞はこれを取り込み芳香化酵素によりエストロゲンに転換する。

       (エストロゲンは血中放出され顆粒膜細胞を自己刺激してその分裂を促す)

   ・外莢膜細胞は結合組織性で最外層に位置(内莢膜細胞と合わせ卵胞膜を形成)。

  成熟卵胞(グラーフ卵胞)

   ・黄体期後期から卵胞期初めにかけ多数存在する二次卵胞の中から1個が成長

    1014日かけて成熟卵胞となる。大きな卵胞腔を持つ。

   ・排卵;下垂体前葉からLHの一過性大量放出(LHサージ)により起こされる。

    LHは顆粒膜細胞に作用して、プロスタグランジンE(PGE)を分泌させる。

    PGEはプラスミノーゲンアクチベーターの放出を引き起こしプラスミンを生じ

    プラスミンが成熟卵胞の卵胞膜と隣接する卵巣の壁を溶解し、卵が放出される。

    (顆粒膜細胞はFSHを促進抑制するアクチビン、インヒビンのペプチドホルモンを放出)

黄体corpus luteum

  ・排卵後、卵胞細胞と卵胞膜細胞層を境していた基底板が消失し、両者が肥大して

   黄体細胞となり、黄体ホルモン(プロゲステロンprotesterone)を分泌する。

  ・顆粒膜黄体細胞;卵胞細胞(顆粒膜細胞由来);脂肪滴や滑面小胞体が豊富で、管状

   の内膜を持つミトコンドリアを有する(ステロイドホルモン分泌細胞の特徴)。

   排卵前と異なり血管が豊富で、コレステロールをホルモン前駆物質として取り込む。

  ・莢膜黄体細胞;卵胞膜由来;小型の細胞で黄体周辺部に存在。

  ・黄体は14日間LHにより維持され(アポトーシス抑制)、その後退縮し白体となる。

  ・受精が起こると黄体は成長し妊娠黄体となる(受精後6週には2倍程の大きさ)。

   胎盤の栄養膜合胞体細胞が分泌するhCG(絨毛性ゴナドトロピン)により維持され、

   妊娠後半に入ると退縮する。

卵管

 ・卵子を子宮に運ぶ。受精が起こる場所(卵管膨大部)。

 ・卵管の外側は拡がって卵管漏斗を作り、その先端に卵巣を包むように伸びる指状の

  突起(卵管采)がある。

 ・粘膜はヒダを有し、特に中央部の卵管膨大部で発達している(子宮に近い卵管峡部は

  粘膜ヒダは少ない)。

 ・上皮は単層円柱上皮で、膨大部で最も丈が高く、子宮が近づくにつれ立方状となる。

  上皮細胞には線毛ciliaを有する細胞と、線毛を欠き分泌機能を有すると考えられる

  細胞がある。卵管外側の粘膜には線毛細胞が多く、子宮に近づくにつれ分泌細胞が

  増える。

 ・筋層は2層の内輪走、外縦走からなり、蠕動運動を行う。

子宮 内膜、筋層、外膜に分けられる。

 子宮体部

   ・内膜は子宮腺(単一管状腺)を有し、その上皮は単層円柱上皮である。

   ・内膜は機能層(性周期に伴って増殖と脱落を繰り返す)と基底層に区別される。

  月経期

   ・内膜表層は脱落し体外へ血液と共に排出される。

内膜には基底層のみ23日続く。

  増殖期

   ・卵巣から分泌されるエストロゲンにより機能層が伸長する。

子宮腺は直線的に伸び間質の中にラセン動脈が侵入するが表層までは達しない。

  分泌期

   ・黄体が分泌するプロゲステロンが子宮腺の粘液分泌を促す。排卵後約2週間続く子宮腺は弯曲蛇行し、ラセン動脈は表層近くまで達する。

 子宮頸部

   ・子宮頚腺;複雑に分岐する(体部では単一管状腺)

    粘液の分泌量と性状が月経周期で変化する(頸部の粘液は粘長で頸部内腔を閉ざ

    すが、排卵期はエストロゲンの影響で分泌量が増加し粘度が低下し、また

    よりアルカリ性の粘液となる)

 子宮膣部

   ・上皮は重層扁平上皮。

 ・厚い重層扁平上皮。暑さや角化の程度は性周期に伴い変化する。

  (エストロゲンの影響を受けると上皮層が厚くあり最表部は角化する)

性周期

  卵胞期

   ・FSHにより二次卵胞のうち1個が排卵に向かって成長を始め、卵胞細胞から

    エストロゲンの分泌が次第に増加する。

   ・エストロゲンは子宮内膜を再生させ、内膜のプロゲステロン受容体の産生を促す。

  排卵

   ・エストロゲンの血中上昇はポジティブフィードバックにより視床下部のLHRH

    Lutenizing horimone releasing hormoneの分泌を引き起こし、さらに下垂体から

    LHサージを起こし、これが刺激となって排卵が起き、黄体が形成される。

  黄体期

   ・卵巣からプロゲステロンの分泌が高まり、感受性が高まった子宮内膜に作用して

    上皮の粘液分泌を高め、間質細胞の一部を脱落膜化させる。

   ・排卵後7〜8日経過すると黄体機能が次第に低下し、プロゲステロンレベルも低下

    その結果、月経直前にはラセン動脈の血行が滞り、虚血期を迎え、さらに動脈の

    崩壊により粘膜の破壊が起き、月経となる。

胎盤placenta

 胎児由来の組織;羊膜に覆われ臍帯に連絡する絨毛膜板、これから出る多数の胎盤絨毛

 母体由来の組織;基底脱落膜と、それから出る胎盤中隔 で構成される。

 その間の絨毛間腔という空間に母体血は流入し、胎児組織とのガス交換栄養補給を行う。

 胎児組織

  ・絨毛膜板から生じる胎盤絨毛を特に絨毛幹といい、絨毛間腔に多数の枝を持つ。

   絨毛の表面は栄養膜合胞体細胞 syncytiotorophoblast layerで覆われており、

   妊娠後期にはその内側は胎児側の血管がほとんど間質を介さず接する。したがって

   胎盤における物質輸送は、薄く伸展した栄養膜合胞体細胞層と内皮細胞を経由する。

  ・栄養膜合胞体細胞層の外表面には電顕で微絨毛があり、吸収に適した構造である。

   糖やアミノ酸は能動輸送か促進拡散によって行われ、ガス交換は拡散による。

   免疫グロブリンのうちIgGは飲作用によって取り込まれる。

  ・妊娠前期(20週まで)合胞体細胞内側に1層の栄養膜細胞(ラングハンス細胞)が

   存在する。次第に小グループ化し栄養膜合胞体細胞が毛細胎児血管に接するように

   なる。絨毛の一部は母体側に接し脱落膜と融合する。これを付着絨毛と呼ぶ。

   (母体側の胎盤中隔が絨毛膜板に接することはない)

 母体組織

  ・胎盤絨毛形成に伴い、母体側の子宮内膜の間質細胞は分裂文化して脱落膜細胞になる。

  脱落膜;胚の全周を取り囲む。

   基底脱落膜;完成した胎盤に属する部分

   被包脱落膜;羊膜・絨毛膜の外側

   壁脱落膜 ;その他の子宮壁

  ・脱落膜細胞は大型明調の細胞で、それらの間にあるフィブリノイドは強い好酸性。

  ・胎盤中隔の表面は栄養膜合胞体細胞層で覆われる。

ホルモン

  ・hCG、胎盤性ラクトゲン、エストロゲン、プロゲステロンなどを分泌する。

下垂体

腺様下垂体 ;前葉と隆起部;口窩上皮が陥凹しできたラトケ嚢Rathke’s pouchに由来

神経性下垂体;後葉;視床下部の続きである。

 前葉

  ・実質細胞はほとんどがホルモン産生細胞;多数の分泌顆粒や発達したゴルジ装置や

   粗面小胞体を持つ(HE染色では酸好性、塩基好性、色素嫌性細胞)

  ホルモン

   酸好性 ;成長ホルモンGH↑GHRH ↓somatostain

プロラクチンPRL↑TRH ↓ドパミン)

塩基好性;甲状腺刺激ホルモンTSH↑TRH

副腎皮質刺激ホルモンACTH↑CRH

性腺刺激ホルモン LHFSH↑GnRH=LHRH

 ・視床下部諸核に細胞体を有する神経分泌細胞の軸索突起は、漏斗に到達して神経終末

  を形成し、種々の前葉ホルモン放出促進/抑制因子を毛細血管に放出する。正中隆起の毛細血管網は合流し数本の下垂体門脈となって前葉に至る。

 ・色素嫌性細胞;未熟細胞や濾胞星細胞(他の支持及び代謝調節)や未分化細胞。

 中間葉

  ・ラトケの遺残腔を取り巻く1層の上皮として残っている

 隆起部

  ・前葉組織が下垂体茎を取り巻くように上に伸び出た部分

 下垂体門脈

  ・2つの毛細血管網の間を結ぶ血管を「門脈」と呼ぶ(肝臓の洞様毛細血管と消化管

   毛細血管)

  ・上下垂体動脈が正中隆起の部位で作る毛細血管網と、下垂体前葉の毛細血管網を

   結ぶ血管を、下垂体門脈と呼ぶ。

 神経性下垂体(下垂体後葉)

  ・視床下部の一部であり、無髄神経線維と後葉細胞(グリア細胞の一種で食作用があり

   リポフスチン顆粒に富む)からなる。

  ・視床下部の視索上核、室傍核に存在する神経分泌細胞の軸索突起が入り、細胞体で

   作られた分泌顆粒が軸索流によって後葉に運ばれる。

  ・神経線維のところどころで輸送体の分泌顆粒によるふくらみが見られ、ヘリング小体

   と呼ばれる。

  ・分泌されるのはオキシトシン(子宮収縮作用、乳汁分泌作用)、バゾプレッシン

(抗利尿ホルモン;AVP arginine vasopressin;ADH antidiuretic hormone

甲状腺

・小葉組織は大小多数の濾胞の集合である。」

・濾胞は単層扁平ないし立方上皮とその基底板によって構成。コロイドを入れた

 濾胞腔があり、糖タンパクであるサイログロブリンを含む(PAS陽性)。

 濾胞上皮細胞

  ・外分泌腺上皮細胞として、頂部は接着複合体により結合し、濾胞側表面には微絨毛

   が存在。細胞質には発達した粗面小胞体やゴルジ装置が見られる。

  ・濾胞上皮細胞はサイログロブリンを合成し、またヨウ素輸送体を介し血中からの

   ヨウ素イオンを濾胞内に放出する。濾胞内ではサイログロブリンのチロシン残基が

   ペルオキシダーゼによりヨウ素化される。変化したサイログロブリンを上皮細胞は

   飲作用で吸収し、ライソソーム酵素により消化、遊離T?(トリヨードサイロニン)

   遊離T?を産生する。T?T?の比はおよそ1:20である。これらの甲状腺ホルモンは

   疎水性で、血中ではサイロキシン結合タンパク等と結合して運ばれる。

  ・甲状腺ホルモンは、人の正常な発達と成長に必須である。欠損はニューロン数の減少

   ミエリン形成不全を伴う精神発達遅滞を起こす。

 傍濾胞細胞

  ・濾胞上皮の基底側に存在する(C細胞)。

  ・ペプチドホルモンであるカルシトニンを分泌する。カルシトニンは骨形成を促進し

   血中カルシウム濃度を低下させる(上皮小体の分泌するパラトルモンparathormone

   と作用は拮抗する)。

副腎皮質

  ・中胚葉由来でステロイドホルモン産生組織。

  特徴;滑面小胞体、ミトコンドリア(小管状小胞状のクリスタを持つ)、脂肪小滴

        (ステロイドホルモンの原料となるコレステロールを含む)が発達。

 球状帯

  ・被膜直下、球状の細胞塊を形成。皮質の約15

  ・電解質コルチコイド(アルドステロンaldosterone)を分泌。

   アルドステロン;腎臓の遠位尿細管、胃腺、唾液腺でNa?の再吸収を促進

          ;アンギオテンシンUにより分泌促進

 束状帯

  ・球状帯の内側の層 髄質に向かう洞様毛細血管にはさまれた細胞索を形成

  ・糖質コルチコイド(コルチゾールcortisol)を分泌

          ;脂肪分解を促進、糖新生刺激、免疫系抑制(炎症反応抑制)

 網状帯

  ・髄質に接した皮質最内層 複雑に交叉する網状配列

  ・男性ホルモン(アンドロゲンandrogen);デヒドロアンドロステロン;を分泌

           ;活性は精巣のテストステロンの約1/5

副腎髄質

  ・神経外胚葉(神経堤)由来 アミンおよびペプチドホルモン産生組織

  ・アドレナリン細胞(A細胞)とノルアドレナリン細胞(NA細胞)の2種類の細胞が

   洞様毛細血管の周囲に細胞索を形成(他にエンケファリン等のペプチドホルモンや

   クロモグラニン、ATPの存在が確認)

  ・クロム親和性細胞である(重クロム酸を含む液で固定すると褐色を呈する)

  ・髄質細胞は発生学的に交感神経の節後ニューロンに相当(交感神経の節後ニューロン

   の伝達物質はノルアドレナリンである)。

  (パラガングリオン;副腎髄質と同様に神経堤から発生し、交感・副交感神経節や副腎

   近傍に分布する小体。頸動脈小体や大動脈小体はパラガングリオンの一種である。

   毛細血管網に取り巻かれた円形ないし多形細胞の細胞索からなる。クロム親和性で

   カテコールアミンを分泌する)

  (糖質コルチコイドには、髄質においてノルアドレナリンをアドレナリンに転換する

   のに必要なフェニルエタノラミン-N-メチル転換酵素を誘導する働きがある)

音の感知

  鼓膜の振動を、耳小骨の関節による連結で、てこの原理によって1.3倍に増加。また

 あぶみ骨の底の断面積は鼓膜の面積の約1/20であり、結局鼓膜の振動は約25倍に増強

 されて内耳の前庭階に伝えられる。

  振動は前庭窓から外リンパの充ちた前庭階を伝わり、蝸牛骨迷路を23/?回転して登り

 蝸牛頂から、同じく外リンパの充ちた鼓室階を下って蝸牛窓(第二鼓膜)に終わる。

  外リンパの振動は、血管条から産生される内リンパで充ちた膜迷路である蝸牛管の、

前庭膜(ライスナー膜)とらせん膜(基底板)を振動させる。すると有毛細胞と蓋膜の間にズレが生じ、有毛細胞が刺激される(内有毛細胞が音を受容し、外有毛細胞はその感度を調節するのに役立っているとされている)。(蝸牛管の最大振幅部位は、音の周波数で

異なっている。低音の場合は蝸牛の頂上近くで、高音では蝸牛の底のちかくで、らせん膜

がもっとも振動する)。

 有毛細胞の興奮は、シナプスによって蝸牛神経の求心性神経線維に伝えられ、その神経

細胞体はらせん神経節(双極細胞)にあるが、もう一方の突起で脳に伝えられる。

角膜

1)    角化しない重層扁平上皮 5層ないしそれ以上の層。基底層は円柱細胞。

2)    その層を支えるのがボウマン膜(上皮は再生するが、これを損傷すると瘢痕を残し

角膜は白濁する)

3)    角膜固有質;角膜の厚さの90%を占める。三叉神経支配を受け炎症や外傷で痛む。

4)    デスメ膜;基底板(全身の組織の中で最も厚い)

5)    角膜内皮;前眼房水と接する(角膜実質には血管がなく、眼房水により栄養)

虹彩

 虹彩支質

  ・(前眼房との境界面)前境界層;線維芽細胞が内皮様配列を示すが細胞間に結合装置

                は見られず、眼房水は虹彩支質に自由に出入りできる。

  ・メラニン細胞が多く、その多寡により虹彩の色調が決まる。

  ・瞳孔括約筋;瞳孔縁を輪状に取り巻く平滑筋 副交感神経支配(動眼神経)

  ・瞳孔散大筋;瞳孔を中心に放射状に伸びる平滑筋 交感神経支配

 虹彩上皮

  ・前後2列の上皮で、2層の単層立方上皮。色素上皮細胞からなりメラニン顆粒を持つ。

毛様体

 毛様体上皮

  ・内側は無色素細胞層(基底陥入やミトコンドリア発達) 外側は色素細胞層

  ・毛様体皺壁部が眼房水の産生部位

  ・眼房水は後眼房から瞳孔を経て前眼房に移行し、前房隅角に至る。

ここで線維柱帯travedula(フォンタナ腔)を通過(内皮細胞は眼房水中の異物を貪食)

強膜静脈洞(シュレム管)から吸収される。

  ・毛様体扁平部から毛様体小帯(チン小帯)と呼ばれる線維が起こり毛様体突起の間を

   通って後眼房を走り水晶体に付着。

 毛様体支質

  ・毛様体筋;経線状、放射状、輪状の3部に分かれ、副交感神経支配。

  ・毛様体筋収縮により毛様体が前進し(水晶体に近づき)、毛様体小帯が弛緩する結果

   水晶体は自身の弾性により厚みを増す。

網膜

1)    網膜色素上皮層

・脈絡膜に接する単層立方上皮層。メラニン顆粒を豊富に含有。その光吸収能により

 網膜に入射する光の散乱を防止する。視物質およびビタミンAの代謝、レチノール

 の吸収、視細胞の老朽化した外節の処理などの機能

2)    杆体・錐体層

・視細胞の外節が存在。

・杆体細胞;光に敏感。視物質はロドプシン(合成にレチノールが必要)。

・錐体細胞;赤緑青の波長の異なる3種類の視物質ヨドプシンを持つ。

3)    外境界線

・ミュラー細胞(網膜組織を支え代謝調節)の接着帯が横に連続している。

4)    外顆粒層

・視細胞(杆体細胞、錐体細胞)の細胞体(核周部)が存在。

5)    外網状層

・視細胞の突起と双極細胞(視細胞の入力を受け視神経細胞へ伝達)の樹状突起の

 終末が存在。

6)    内顆粒層

・双極細胞、ミュラー細胞の細胞体。水平細胞(錐体細胞の突起とシナプスを形成し、

軸索突起は杆体細胞の突起とシナプスを形成する)。無軸索細胞(アマクリン細胞;

双極細胞の軸索との間にシナプスを形成)が存在。

7)    内網状層

・双極細胞の軸索突起、無軸索細胞の突起、視神経細胞の樹状突起、とそのシナプス

8)    視神経細胞層

・視神経細胞の細胞体が存在

9)    視神経線維層

・視神経細部の軸索突起、星状膠細胞が存在

10)内境界膜

  ・硝子体との間に存在するミュラー細胞の基底板。

網膜剥離

  ・色素上皮層と視細胞の間に形態的接着装置はなく、色素上皮の産生するムコ多糖

   が両者の接着に関わる。したがって様々な病的状態で両者の間に剥離が起こる。

脈絡膜

  ・強膜と網膜の間にはさまれた厚さ0.3mmの層

  ・豊富な血管網が存在し、網膜色素上皮層へ影響を供給する。

  ・メラニン細胞に富む。

  強膜側から1)脈絡上板 2)血管板 3)脈絡毛細管板 4)ブルッフ膜 に区別